bm-koishikeribu(yui)
M-CHARI-METAL

『物語の物語Ⅱ』

【物語の物語 ⑦ -ダーキニーとサフェードの過去-】

 サフェードは、すぅの右手で首や耳の後ろをもふもふ♪されながら喉をグルグルと鳴らし、すぅ の左腕に頭を擦りつけた。

SAF 「何も急いて行く事もあるまい。 あたしらが教えてあげられる事は全て教えてやろうじゃないか。」
DAK 「ははは。 サフェードは大分 すぅ を気に入った様だな。 そうだな。 まだ半覚醒と未覚醒だものな。 1分1秒を争うわけでもないか。 姉者達がいれば色々と見せながら教えてやれるのだが、空を飛べるのか?から教えてやるか。」

 そう言うと、ダーキニーは右手の手の平を正面に向けた。すると すぅ、由結、最愛が繋がる“糸”とは別に“糸”が現れそれを掴む。と共にダーキニーの肉体から魂が上方に抜けて行き宙に浮かんだ。その姿に歌を歌っていた人々が歌を止め歓喜の声を上げ拝む様に手を合わせた。ダーキニーはその様子を眺め、この地下空間の空中を1周するとまた肉体へと戻ってきた。

DAK 「とまぁ、こんな所だ。 私のエーテル体とアストラル体は濃度が濃いのでな。 それ故に、見えぬ様にしなければ、人々に輝く姿として見えてしまうんだ。 お前らもその内に『空を飛んでる』とか言われだすかもな。 ははは。 あとは、人を食うかか? お前らの時代では、そんな風に伝わっているのか? 何組もモイライが会いに来ているが、そんな事を聞かれたのは初めてだなぁ。 まずは回答からだな。 人なんて食わないよ。 死者への冒涜も行わない。」
YUI 「あぁ、良かった♪」
DAK 「そう伝わる理由は、わからないでも無いがな。 人がここに近づかぬ為と、私が連れ帰った感染者の縁者が後を追ってこぬ様にと思い、ここを『人食いの集落』との噂を流した。 でないと感染が広がる可能性があるからな。 仮に近づいた者が居たとしても、この香木の匂いだ。 噂が真実だと思い、去って行くだろう。」
MOA 「香木の匂いで去って行く? どういう意味だろう?」
YUI 「お香はね、匂いを消すために焚くんだよ。 一番消したい匂いは、死の匂いだったんだと思う。 だからお香は各宗教と密接なんだよね。 お線香もそうでしょ? でも、ここは香木の匂いだけで、イヤな匂いはしないよね。」
DAK 「ここでは、感染を広げぬ様に死後すぐに、火葬にしているからな。 そして無くなった後、弔われぬのも淋しかろうと思い、身に付けていた物と火葬した後の骨を縁者にこっそり気付かれぬ様に戻しているのだ。 それが、死後の物を喰らうとの言い伝えに繋がったのだろう。」
MOA 「あぁ、そういう事だったんだ。 ホントだね。 由結、真実は違ってたね。 良かったね。」
YUI 「うん! ダキニたん、他にも今まで話しを聞いていて不思議に思った事があるの。 聞いてもいい?」
DAK 「あぁ、答えられる事ならよいぞ。」
YUI 「なんで、ダキニたんはサフェードに力を分け与えているの? サフェードが言ってた永久の契約って何?」
DAK 「その事が。 モイライは人と同じ様に転生を繰り返す。 そして、半覚醒するまで人と同じ様に過ごすのだ、今までのお前達の様に。 ここに問題があった。 私達が参戦した先般の大戦だが、本来は私達の先代のモイライが参戦するはずだったのだ。 ところがその先代が神へと完全覚醒する前に人間の姿で亡くなってしまった。 その為、私達は若くして神へとなる事となり、大戦に準備無く参戦する事となってしまった。 その辺はサフェードの方が詳しいな。 話しを聞かせてやってくれ。」
SAF 「そうだねぇ。 あたしゃダーキニー達の先代のモイライと共にいたのさ。 先代のモイライに拾われた時、あたしゃ死にそうだった。 この地のジャッカル共に襲われてね。 その時の話しからしてやろう。」

 サフェードはそう言うと、少し淋しそうな眼差しで宙を眺めた。

SAF 「あたしゃ元々この地にいる様な純潔のジャッカルじゃないんだよ。 まだ赤ん坊の頃、東の方の土地から人間達に檻に入れられ連れてこられたのさ。 白い姿は珍しいからね。 おまけにあたしゃ特別で、人の言ってる言葉が理解出来てた。 今みたいに話せはしなかったがね。 で、人の会話から好機を伺い隙をみて檻から逃げ出したのさ。 そして人間達の町を飛び出し、高原を逃げ彷徨っていた所、ジャッカルの群れに出会ってしまった。 その群れに同族と判断されなかったあたしは、狩りの対象となり襲われちまったのさ。 それを助けたのがダーキニー達の先代のモイライだった。 その当時、彼女達は半覚醒者でね。 ジャッカルの群れを追い払い、怪我で死ぬ間際の状態だったあたしの運命を歪め、生き長らえさせてくれたのさ。 代わりを立てたのか、元々死ぬ運命じゃなかったのかは、今となっちゃわからずじまいだがね。」
SU- 「へぇ~。 サフェードにそんな事があったんだぁ。 で、その後は?」
SAF 「この白い体の影響なのかねぇ。 あたしゃ他からの力に影響され易かった。 白い物はどんな色にも染まるし、あらゆる物を吸収しやすいってのかねぇ。 彼女達の力が、あたしの中にジワジワと染みていった。 そして、何年か過ごした時、あたしは彼女達の言う事に対して言葉で返答出来る様になってたのさ。 平和な日々だったよ。 彼女達と語り合い。 そして彼女達と共に特別な力も成長して行った。 彼女達は覚醒者となり、あたしゃモイライの力の影響か自分自身の運命を若干操り延命できる様になっていった。 つまり、あたしゃ死から離れて神に近づいていったのさ。 そんな中、神々の戦いが始まってしまうんだ。 モイライは元々シヴァ神の軍勢でね、敵対する神々の中の1柱がモイライが完全覚醒する前に神の力で彼女達を暗殺してしまおうと企てた。 あたしが彼女達から離れている時にその暗殺は実行され、あっさりと成功してしまうのさ。 あたしが戻った時、彼女達は襲われた直後でね。 徐々体温が奪われ冷たくなっていくのを感じながら、あたしゃ泣き続けたよ。 あたしが彼女の近くに居続ければこんな事にならなかったのにってね。 そんな時、不意に感じたのさ。 新たなモイライの気配を。 あたしゃ飛んでその気配に駆け付けたさ。 そこで見つけたのが、人々の戦いで殺されてしまった母親から、生まれてきたばかりの3人の赤子、ダーキニー達だったのさ。」
DAK 「あぁ。 そして私達姉妹は、サフェードに育てられた。」

 ダーキニーとサフェードは目を合わせる。 サフェードはその当時を思い出し、鼻で「ふふっ」と短く笑った。

SU- 「じゃー、サフェードはダキニたん達のお母さんなんだね。」
DAK 「いやいや。こいつは、母親としてではなく、生き抜く為の術を叩き込む鬼教官として私達を育てていったのさ。 参ったもんさ。」
SAF 「神々の戦いは始まっていたからね。 人間達と永遠に近い時間を生きる神々とでは時間軸が異なる。 しかし、いつ参戦する事となるかわからないからね。 覚醒者となるまでのビシビシ鍛えてやったさ。」
DAK 「そして、私達はクソオヤジの加護もあり神々の仲間入りをする様になった。 そして大戦で勝利を収めたのさ。 神域からこの現世に戻った時、大戦の影響で現世は酷い状態だった。 私達は元々人間だからな、神としての手を差し伸べる事にしたのさ。 そして、倒れ行く人々を見て思った。 人間として転生するモイライには神へとなるまでサフェードの様な導く者が必要だとね。 神へと駆け上がる前のモイラは普通の人間と同じだ。 私達の先代の様に、そして倒れてゆく人々の様に、モイラも人として倒れてしまうのだ。 使命ある波乱の時代の未来のモイラがそうならぬ様に、私達はサフェードと神という立場での契約をする事にした。 神使であるサフェードに私達の“運命の女神”としての力を与え続け、自分の運命を完全掌握した神獣へと、そう永遠に近い命を持つ神へと昇華させる事にしたのだ。 その代りに、転生したモイライの道標の役目を担い続ける様にとね。 つまりサフェードは、モイラの力の結晶の様なモノなのさ。 だから、私達モイライと同じ様にこの場でお前達もサフェードと会話する事が出来るのさ。」
SAF 「あんたらの時代に道標としての役目を担うのは、あたしになるのか。 それとも今、ここにいる人々の食料を確保する為に、この子の姉達2人と狩りに出かけている、あたしの子供になるのか。 ・・・あたしもお前達と関わりたくなって来たよ。」

 急に由結がワタワタと慌てだした。必死で手招きして すぅ を呼び寄せようとするが、すぅ はサフェードの背に顔をグリグリと押し付けて毛の感触に夢中になっている為に気付かない。その由結の慌てぶりを見ていた最愛が何かに気付いた様にピョンと正座をしたまま跳ねた。

MOA 「サフェードが導く者? そして神・・・母親? ああっ!! MOTHER FOX GOD!!!」
YUI 「『あの銅鑼(ドラ)を鳴らすのはあなた』のマザーがサフェード??」
SAF 「銅鑼ってなんだい?」
MOA 「こーんな、大きな円盤状の鐘です! それを鳴らせと! 私達の時代のマザーが!!」
SAF 「なんだか、よくわからないねぇ。 たしかに神々の大戦の時も、あたしの野生の嗅覚で好機を嗅ぎ取り、先制攻撃の合図としてダーキニーに鐘を叩かせたねぇ。 そんな感じの事かい?」
YUI 「・・・導く者の銅鑼。 そして『Road of Resistance』という曲の誕生。 銅鑼も狼煙も戦いの開始と終焉の合図として使われるもの・・・。『Road of Resistance』がセカンドの1曲目となった意味はそういう事なの? ダメだ、まだわからない事が多過ぎて考えがまとまらない!」
DAK 「すでにお前達の周りで何かの準備が始まってる様だね。 だったら、始まりのモイラに早く会いに行くべきだな。」
YUI 「はい。 すぐに会いに行こうと思います! ダキニたん、サフェード、いやマザー狐様、ホントに色々教えてくれてありがとうござます!! 最愛!」
MOA 「ダキニたん、サフェード、ありがとう!! ほら、すぅちゃん行くよ!」


【物語の物語 ⑧ -鎮魂と安息の歌-】

 由結と最愛は立上り、左薬指の“糸”を解除し右手でしっかりと掴み、歩み寄よって2つの魔法陣を重ねあわせた。

SAF 「おい、すぅ よ。由結と最愛は行こうとしておるぞ。」
SU- 「えぇぇ? もう行くの?? う~~~ん。」
YUI/MOA 「すぅちゃん、早く!!」
SU- 「ダキニたん、サフェード、ありがとね。 ここの人達もありがとうだね。 あの女の子もあそこで周りの人達から歌を教わってるね。 楽しそうに見えるよ。 この人達にとっては、ダキニたん達は、絶望の中の光なんだね。」
DAK 「そう在りたいものだな。 この者達には、ここに来てすぐに余命を伝えている。 限られた時間だから出来る事、残せる事が有るからな。 この空間だけだが、残りの余生を病の痛みと苦しみから解放させ、精一杯生きて欲しいと願っておる。」
SU- 「すぅね。 みんなにお礼がしたいの。 言葉で教えて貰った事以上に、みんなの瞳から伝わってきた事に、すぅは心を込めて感謝をしたい。 だから、すぅ に出来る事をさせて欲しいの。 ねぇ、由結、最愛、ちょっとだけ すぅ に時間を頂戴。 ダキニたん、サフェード、この舞台に上がる段の所に座って貰える?」
YUI 「すぅちゃんに出来る事だね。」
MOA 「伝わるって言ってたものね。」
DAK 「何をしてくれるのだ?」
SAF 「楽しみだねぇ。」

 すぅ は、サフェードから離れ立ち上がる。ダーキニーとサフェードは由結と最愛に連れられ舞台へ上がる3段の1段目まで下がり腰を段に下ろした。その様子に、歌っていた人々も歌を止め、様子を伺っていた。

 すぅ は、瞳を閉じ息をゆっくりと吐き出した。
 自分の鼓動を確かめる様に、左手を胸に添え軽く握る。
 ゆっくりと、大きく息を吸ってゆく。
 目に見えるかの様に空間の大気の濃度が上がって行く。
 様子を伺っていた人々の中で緊張が広がる。
 静寂の中、香炉の中の香木が一斉にバチバチとはぜる音が小さく響いてゆく。
 すぅ が、瞳をゆっくりと開いた時、この地下の聖堂とも思える空間を完全に掌握していた。

 静かに、優しく、輝くような、鎮魂と安息の歌が聞こえ始める。

   どうして眠れないの♪
   どうして夜は終わるの♪
   要らない何も明日さえも♪
   君がいない未来♪
   どうして笑ってたの♪
   どうして寂しかったのに♪
   誰も知らない本当はただ♪
   そばにいてほしかった♪

   絶望さえも光になる 止まない雨が降り続いても♪
   絶望さえも光になる 悲しい雨が虹を架けるよ♪
   どこまでも♪

   二度と会えないけど 忘れないでいたいよ♪
   夢が続くなら 覚めないで♪

 耳で聞こえる歌では無かった。心に真っ直ぐに届き覆う様な歌声だった。
 静かに始まった歌は徐々に力強くなり、心だけでなく体全体を掴んでいった。
 人々の瞳から涙がこぼれ続け、「光る少女が・・」と呟きだした。
 舞台で歌う すぅ の周りに光が集まり、光の衣を纏う様に輝きを帯びていた。
 すぅ は、胸に添えた左手が開き、右手と共に、聞き入る人々の運命を受け止める様に両手を開いてゆく。

   どうして笑ってたの♪
   どうして寂しかったのに♪
   誰も知らない本当はただ♪
   会いたいそれだけだった♪

   絶望さえも光になる 止まない雨が降り続いても♪
   絶望さえも光になる 悲しい雨が虹を架けるよ♪
   今も♪
   止まない雨が心満たすよ いつまでも♪

 歌い終わっても、余韻が残り、誰ひとりとして動けずにいた。
 ダーキニーですら魂を奪われたかの様に涙流れるまま立ち尽くし、サフェードは嗚咽をこぼしていた。
 すぅ が、ゆっくりと瞳を閉じてゆく。それに伴い、すぅ が纏った光がゆっくりと消えていった。
 沈黙が心地いい。
 皆がしばし、すぅ の歌の余韻を噛みしめる。

 沈黙を破ったのは、由結と最愛だった。
 由結と最愛が、「すぅちゃーん!」と叫びながら、すぅ に駆け寄り強く抱きつく。
 すぅ は、少し照れて頭を掻き、左薬指の糸を解除した。そして、由結と最愛に話しかける。

SU- 「どうだったかな? すぅの思い、みんなに伝わったかな? 上手に歌えてたかな?」
YUI 「うん。 みんなを見てみなよ! 絶対に伝わったよ!」
MOA 「すぅちゃん 大好き!!」
SU- 「そっか。 だったら良かった。 ダキニたん、サフェードありがとう。 もう行くね。 また会いに来るから、See youだね! 最愛、お願い。」
YUI/MOA 「ダキニたん!サフェード! See you!!」

 最愛が“糸”を軽く引く。
 3人は闇に消える様にこの時代から消えていった。

 ダーキニーとサフェードは、涙を拭ったのちお互いの顔を見合わせ、笑いあった。
 立ち尽くしていた人々も、それに合わせて笑いあう。

DAK 「慌ただしい子達だ。 それにしても、凄いものを見たな。サフェード。」
SAF 「あぁ、凄かった。」
DAK 「歌っている間の すぅ は、この空間の領域を奪っていた。 半覚醒すらしていないモイラの少女が、私達ダーキニーが支配する領域をだぞ。 あの娘はなんだ?」
SAF 「わからん。 わからんが、すぅ がモイラの何かを大きく変えてしまうかもしれん。 あたしの子供が神獣化したら、のんびりしようかと思っていたが。ふっふっふ。未来が楽しみだよ。」
DAK 「また、すぅ の歌声が聞きたいな。 ・・・そうだ! 姉者達が帰ってきたら皆で見に行こう!!」
SAF 「おぉ!! その為なら、あたしの力も惜しみなく出すぞ。 楽しみだな、ダキニたん。」
DAK 「お前まで『ダキニたん』って言うな!!! ははははは。」

 その時、ダーキニーは気付いていなかった、その身を赤黒く染めていた病の痛みと苦しみが消え、白く輝く肌の色に戻っていた事を。
 サフェードもまた気付いていなかった、完全なる神獣にこの時初めて昇華した事を。ダーキニー達の先代を神に殺された憎しみが、完全なる神獣化を手前で抑止していた事を。


【物語の物語 ⑨ -覚醒-】

 『運命の間』に入った途端に、由結が「あぁぁぁぁぁぁっ!!」と叫び左手で頭を抱えだした。苦悶の表情で足をバタつかせ、身をよじる様に悶えだした。それを見た最愛は驚きあわてる。が、すぅ はニヤニヤしながら様子を見ているだけだった。

MOA 「ど、どうしちゃったのよ?! モイラの力の影響なのっ?!」
YUI 「最愛がぁ!最愛の所為でぇぇぇぇっ!!」
MOA 「えっ? えっ?? なに?? 最愛が何かした??」
SU- 「そうだね。 ありゃ最愛が悪いね。 すぅのナイスファイトを最愛が完全に邪魔したよね。 ニヤニヤ。」
YUI 「あの時、すぅちゃんがマジ女神に見えたよ。 なのに!それなのに最愛が! 小悪魔どころか大魔王だよっ!!」
MOA 「なにしちゃったの? 最愛はなにをしちゃったの??」
SU- 「由結は何故インドにこだわったのかな? ニヤニヤ。」
MOA 「あっ! 秘術!!」
SU- 「勇気の出ないTOO SHY SHY GIRLな由結に代わって、すぅが聞こうとしたのにぃ。 ほら、大事な所で最愛が邪魔するから。 ニヤニヤ。」
MOA 「そうだったっけ? なーんだ、そんな事かぁ。」
YUI 「ぐぬぬぬぬぬっ!! 『そんな事』と言ったな!!『そんな事』って!!! 由結の人生を返せ!! 由結の!由結の!由結の明るい未来を返してぇよぉぉぉ。 びえぇぇぇぇん!!」
SU- 「あ~あ、最愛が由結を泣かせたぁ。 ニヤニヤ。」
MOA 「由結、ごめん!ごめん! だって、あの時はすぅちゃんがデリカシー無く、色々聞くから。 ちょちょちょ! すぅちゃんも余裕ぶってニヤニヤしてないで、何とかしてよぉ。 由結とすぅちゃんは、ペチャ同盟でしょ??」
SU- 「その同盟、すぅ は脱退させて貰おうかと。 ニヤニヤ。」
YUI 「え?? なんで?? ヒックヒック。」
SU- 「ふふ~~ん。 すぅが、ダキニたんとの会話に入らずにもふもふ♪してただけとお思いですか?お二方? ニヤニヤ。」
MOA 「まさか!」
SU- 「最愛の邪魔で、ダキニちゃんから直接確証を得る発言は頂けませんでしたが、サフェードとコソコソ話しをしながら情報はちゃんと仕入れておりまする♪」
MOA 「い、いつの間に!」
SU- 「モイモイとダキニたんで話してる時とかぁ。 ダキニたんが飛ぶ辺りとかぁ。 なので、ダキニたんとモイモイの話を すぅ はまったく聞いてませんでした!!!」
MOA 「コラァー・・」
YUI 「でかした!!!!!! インドに来た意味がゼロになる所だったよぉ。」
MOA 「うわっ、被る様に褒めた。 おまけに“意味ゼロ”って言い過ぎだろ!」
YUI 「で、で、で? すぅお姉さまぁ~ん、お・し・え・て♡」
MOA 「どうした由結!キャラ変わってるぞ!」
SU- 「しかたないなぁ。 カワイイ妹には特別に情報提供してやろうかな♪」
MOA 「おい! お前等、最愛を完全に無視してるな? まぁ、またちょっと大きく成長しちゃった最愛には関係ない話だから無視されても良いですけどねぇ。ハフゥ~~ン♡」
SU- 「ウルサイ!ちび!! いい気になるな!ちび!! 調子に乗るな!ちび!!」
MOA 「うっ!」
YUI 「死ね!ちび!! 地獄に堕ちろ!ちび!! BBM解散だ!ちび!!」
MOA 「そこまで言わなくても!」
SU-/YUI 「ウソつくな!ちび!! 変わってねぇだろ!ちび!! 巨乳ぶるな!ちび!!」
MOA 「しくしく。・・・はい。ごめん、嘘つきました。 最愛も平均以下です。 仲間に入れて下さい。」
SU- 「しかたないなぁ。 2人に教えてやるか♪」
YUI 「で、で、で? どんな秘術??」
SU- 「サフェードに『ボインボイン秘術教えて♪』って聞いたらぁ。」
YUI 「き、聞いたら????」
SU- 「・・・『そんな秘術は無い!』だってさ!」
YUI 「ガビビィ~~~~ン!! ガクッ。」
MOA 「うわぁ。白目剥いて腰から落ちた。」
SU- 「でもね、『豆のカリーをよく食べてる』ってさ。」
YUI 「イソフラボィ~~~~~ン♪ キタァーッ!大豆製品大正解!!」
MOA 「あっ、復活した。」
SU- 「それともう一つ『チャイをよく飲む。ミルクだけでなく“れん乳”も入れて飲んでる』ってさ。」
YUI 「『練る、おっぱい』と書いて『練乳』!!! 秘伝キタァーーッ!!!!」
MOA 「・・・涙流して喜んでるよ。」
SU- 「大豆製品も乳製品も正解で良かったね♪ コンビニで買ってて良かったね!!」
YUI 「うん!!!!」
MOA 「抱き合って喜んでるし。 そろそろ行きますよぉ。」
YUI 「毎日『トマトと豆腐の練乳サラダ』食べるよ!!」
SU- 「すぅは『ネギと納豆の練乳ご飯』食べる!!」
MOA 「マズそう、おぇぇ。 もういいや。 “始まりのモイラ”に会いに、無視してしゅっぱーーつ!」

 最愛が、運命の検索をしようと“糸”を円盤状に膨らせ左手をかざしたまま固まる。そして、『う~ん?』と唸っていた。 かざした左手をシュシュっとDJがレコードをスクラッチする様に滑らせる。
 円盤状に膨らんだ“糸”から緑や赤、黄、青といった色取り取りの糸が浮かび上がる。

YUI 「こんな色付きで輝く“糸”初めて見るね。」
MOA 「うん。今まで無かった“糸”達なの。 急に見える様になったのよ。 ウチらを拒絶している様な“糸”も有ってね、ちょっと触るのが怖いんだよなぁ。 ・・・これってたぶん。」
YUI 「えーと、由結も手をかざしてみるよ。・・・なるほどね。 神々だね。」
MOA 「やっぱりそうだよね。 もし敵対している神を引いてしまったらどうしようかと思って。 神々の戦いの真っ最中だったら・・・。 神々はウチらの事見れるし触れるんだよね。 いきなり攻撃されるなんて事ないかな?」
SU- 「え? なにが見えるの? なんの話をしてるの??」
MOA 「え? すぅちゃん見れないの?? あっ!!」
YUI 「う、うん。 すぅちゃんの状態が見てわかるね。 あっ! 最愛もわかる!!」
MOA 「最愛と由結は、覚醒者になってるね♪♪ クラスアップしちゃってるね♪♪」
SU- 「・・・で、すぅ は??」
YUI/MOA 「・・・悲しいけど、気付き状態の一般人です。 半覚醒すらしていません。」
SU- 「ガーーーン! ・・・なに?この劣等感は?」
MOA 「ほら、ほら、ちょっと敏感な乙女って感じだよ。 “糸”見えてるし触れてるから普通じゃないよ。 過敏だよ。」
SU- 「ガビーーーン! な、なんで、すぅ だけ?」
YUI 「ダキニたんに由結と最愛は触りまくったからかなぁ。」
SU- 「すぅ だって、サフェードをもふもふ♪してたもん!!」
MOA 「その差だね。 ほら、始まりのモイラに会いに行くんだし、そこでチャチャっと覚醒させて貰いなよ。 とりま、このオレンジに輝く“糸”の神様がモイライに好意的っぽいから、こいつを使って辿っちゃうぞ!」
YUI 「ちょっと待って! 神域である常世に入る直前で止まって! ダキニたんが次元の境界っていう表現をしていた。もしかしたら壁みたいな物が有るのかもしれないから!」
MOA 「了解!!!! 皆様“糸”にお掴まり下さい。 しゅーぱーつ、しんこぉーーっ!!」

 すぅ、由結、最愛はダーキニーの時代より、更に深い時代へと急降下していった。
 白黒の景色が上斜め後方に流れていき、スピードの所為で世界が灰色に染まっていった。
 ほどなくして、最愛は急降下から徐々にスピードを落とし、そして緩やかに止まった。

MOA 「えーと。 時代はここだね。 で前に進むと神々達が住む神域に入る・・・けど、何もないね。」
YUI 「そうだね。 境目も何もないね。 じゃー、スルッと入りますか。」

 最愛を先頭に、前方へ滑る様に進んだ。
 その途端に、ベチィーーーン!という音がし、最愛と由結の右腕が後ろに引っ張られた。
 慌てて、2人が振り向くと、そこには何もない空間に すぅ が潰れたカエルの様な恰好で張り付いていた。

MOA 「えっ? すうちゃん?? そんな恰好で何してるの?」
SU- 「・・・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
YUI 「なんですって? それにしても、ガラスに押し付けたみたいな顔して、面白――い♪」

 すぅ が何かを必死で訴えているが、由結と最愛には何も聞こえなかった。
 由結と最愛は半歩程下がり、前かがみにお辞儀をする様に頭だけ すぅ の顔の横に乗り出した。その途端に、大音量の すぅ の声が聞こえ出した。

SU- 「目にょ前に!! 見えにゃいガラシュがありましゅ!!! こっひまへ、下がってくらはい!!」
MOA 「えっ?! 壁があるの???」
YUI 「横から見ると、すぅちゃんの前面が押しつけた様に平らになってる!! ほら! 胸だってぺったんこの平らに!!」
SU- 「しょれは、もともとの中元でしゅ!!」

 由結と最愛は、あわてて体全体ごと すぅ がいる側に戻った。
 すぅは、「イタタタタッ!」と言いながら、左手でゴシゴシと顔を洗う様にこすった。

YUI 「だ、大丈夫?」
SU- 「肉体だったら、鼻血ブゥーだったよ。 この状態でも痛いのは発見だよぉ。 くうぅぅ。」
MOA 「すぅちゃんには、壁がある感じなの?」
SU- 「うん。 ガラスみたいな感じで、たまに虹色にザワザワって光るよ。 すぅパンチで
叩き割ってみよう!!」
YUI 「や、やめときなよ!!」
SU- 「えーーい! グキッ!!! ・・・ぬぉぉぉぉぉぉっ。」
MOA 「言わんこっちゃない、手首曲がってるし骨折した? ってこの精神体の状態だからしないか。」
YUI 「やっぱり、覚醒してないと無理なのかなぁ。 由結にはそんなガラスまったく見えないんだけど。 ね?最愛もでしょ?」
MOA 「見えないねぇ。 そう言えば『“始まりのモイラ”には色々なモイライに会ってから最後に行け』って言ってたよね。 色々なモイライに会って覚醒しろって事なのかな?」
YUI 「じゃー戻って別のモイライ探しに行く??」
MOA 「そうするしかないか。」
SU- 「ん?ん? あっ! 誰か来るかも?」
YUI 「はぁ?? ここは『運命の間』だよ。 誰か来るわけないじゃん。」
MOA 「そうだよ。来るわけ・・・。って、ホントだ!! 誰かが来た!!」

 すぅ 達3人の50m前方の空間に縦5m程亀裂が入り割れてゆく。その亀裂の真ん中から押し広げるように3人の人物が出てくる。傍らには大きな獣を携えて。
 突然に表れた3人は行者の恰好をしていた。全身黒塗りの行者だった。頭に六角形の頭襟(ときん)こそ付けていなかったが、山伏や修験者と同様の服装を纏っていた。そして、鼻から口を覆うように黒塗りのマスクをしていた。マスクの上から覗く眼差しは3人共に険しかった。
 その眼光に押されてか、すぅ、由結、最愛の3人は1歩、2歩と相手が進むに合わせ20m程後ずさる。由結がいち早く左薬指に“糸”を巻き固定させる。いざという時に自由に動ける様に準備をしたのだ。それに続き、すぅ と最愛も“糸”を左薬指に固定させた。 由結と最愛が臨機応変に即座に動ける様、右足と右手を引き、僅かに腰を落し構えた。この行為が間違いを呼んでしまった。
 行者姿の3人がスピード滑る様に近づいてくる、そして10m手前でピタリと止まった。真ん中の行者姿の一人が一歩前に出、すぅ達3人にギリギリ聞こえる声でぼそりと呟いた。

???? 「・・・追手だな。」

 その途端に、一歩後ろにいた2人の行者姿が左右に分かれ広がった。と思った矢先、3方から一気に襲ってきた。
 由結は右側に最愛は左側に すぅ から即座に離れ向かい打つ。

 右側から襲ってきた行者姿が由結の手前直前で、流れる様に時計回りに回転しながら由結の頭部を右足踵で刈り取る様な回し上段蹴りを叩き込んできた。その蹴りを由結は上体を後方に引きスウェーバックで躱わし、上体の戻しと同時に左拳をがら空きの行者姿の顔面に向かって放り込む。その拳を行者は、回転を殺さず回りながらしゃがみ躱す。と同時に両手を地に着きながら着地した右足を軸にコマの様に回転し、由結の右足を狙う強烈な左足の蹴りを叩き込んできた。由結はしなる様なその強烈な蹴りを右ひざを上げ右脛に意識を集中しながら受け止めた。
   ガキィィーーーーン!!!
 行者姿の左脛と由結の右脛が激突した瞬間、激しい金属音が鳴り響き強烈な火花が飛び散った。

 左側から襲ってきた行者姿に対して、先制攻撃を仕掛けたのは最愛だった。最愛は相手の突進の勢いを殺す目的を含め鋭い前蹴りにて右足の上足底を行者姿の胴体に叩き込む。その蹴りを行者姿は最愛の左側に滑り込む様にしながら避ける。と同時に右手刀で最愛の喉を切り付けてきた。最愛はその手刀を右足を前方に放り出したまま体を一気に後ろにのけ反り躱してゆく。行者姿の手刀が最愛の顎と鼻先をかすめる様に通り過ぎる。最愛は左足を軸に左へ体を捻り、仰向けからうつ伏せへと上体を移しながら、後方へ通り過ぎた行者姿へ向き直る。最愛は顔を上げ行者姿が通り過ぎた後方へ視線を移したが、そこには行者姿はいなかった。行者姿は更に反時計回りで最愛の死角へと滑り込んでいた。手刀が空を切った瞬間、右足で地面である空間を蹴り更に最愛の後方を取るべく向き直る最愛の斜め後方へと移動していた。最愛が左に気配を感じ左足を引きながら体の向きを変えてゆく。その動きに合わせて行者姿の突き立てた右手人差し指が最愛の顔面を襲う。最愛の左眼球を狙う回避不能の必殺の一閃だった。向きを変える最愛は目を閉じていた。次の攻撃を気配で察知する為だったのか。必殺の一閃が最愛を襲う中、最愛の軽く閉じた唇の口角が上がる、慈愛に満ちた微笑の様に。最愛の左腕が空間を切り裂く様な目の止まらぬ速さで動いた。
   シュンッ!!
 最愛の左手人差し指と親指が、行者姿の人差し指の指先を捕えていた。必殺の直線運動はわずか2本の指で、ふんわりと優しく殺されていた。

 すぅ は走っていた。ただひたすらに全力で。なぜ走っているのか考える余裕すら無い位に、皆に背を向け全力疾走していた。後を追う行者姿の右拳が すぅ の後頭部を襲う。それを すぅ が右折して避ける。そこから反時計回りに、ちょっと猫背でがむしゃら疾走。追ってる行者姿も何故こいつを追っているのか分からなくなり首を傾げる。逃げる すぅ。追う行者姿。行者姿は、すぅ 走りを見ながら笑いが込み上げてくる。走る すぅ が天を仰ぎ、叫び始めた。
   「追手じゃないよぉ!!モーイーラーだよぉぉぉ!!!」
 ぐるっと半周して、戦闘が止まった4人の元に戻った時、ズベェェッっと すぅ が転んだ。両手を上げて万歳の状態でヘッドスライディングで滑り込む。

 行者姿の3人は、すぅ達3人から3m程離れた所に集まった。そして今までの間、まったく動かずその場で腰を下ろしていた大きな獣は興味なさそうに、あくびをしながら、のっそのっそと行者姿の3人の後ろに歩いて近付いた。その獣の毛は白く、やはり狐の様な顔立ちだった。
 お互いに、様子を探りあっていると、いきなり すぅ が起き上がり、右手を挙げ相手に声をかけた。

SU- 「モイライ、ミナ、キョウダイ!! モイライ、ウソ、ツカナイ!! ハオ!!」

MOA  ヒソヒソ「なんで、いきなり片言なの?? なんで、ネイティブアメリカン口調なの??それより、この人達いきなり攻撃してきたけど、ちゃんと見たらモイライじゃない!!仲間じゃない!!」
YUI  ヒソヒソ「怖かったぁ~!!で、山伏って言うより、カラス天狗みたいな恰好だね。あのマスク蒲生鎧の時のマスクに似てるかも??」
SU-  ヒソヒソ「敵意はないよ。って表現しようとしたら、片言になっちゃった。てへっ。 ところで、あの後ろの狐、サフェードに似てない?」
MOA  ヒソヒソ「似てる!似てる! でもちょっと小さいね。 あと、顔もちょっとサフェードより丸顔かも。」

 すぅ、由結、最愛のヒソヒソ会議が進む中、真ん中の行者姿のモイラが一歩前に出る。その背に2人の行者姿が隠れるようにし、こちらの様子を伺っている。

IIZE 「おぬし等もモイラであったか。 いきなり攻撃してしまいすまぬ!! この世界にいるのだから当然なのに、気が動転していた。 ここで何をしておったのだ?」
YUI 「私達は日本から来たモイライで、“始まりのモイラ”に会いに来たのですが、すぅちゃんが入れなくて。 あっ、この彼女が神域に入れなくて、困っていた所なんです。 私は由結と言います。 こちらの彼女が最愛で、こっちが すぅちゃん です。 ところで、いきなり攻撃とは何かあったのですか? 追手ってなんですか?」
IIZE 「常世で“始まりのモイラ”会った後、何か身になる手掛かりをと思い探索したのが間違いであった。 “始まりのモイラ”に敵対する勢力の神々と出会ってしまい、襲われてしまったのだ。 命からがら脱出した矢先だったのでな、神々の追手と勘違いしてしまった。 改めて申し訳なかった。 わし等は倭国の飯綱という。 後ろの2人はわしの妹達だ。 人見知りが激しくてな。 無礼だが許してやってくれ。」
IIZS 「すまんっす!」
IIZT 「すまんっす!」
IIZE 「で、こいつがハクだ。 お前、この者達がモイライだって気付いていたな?!」
HAKU 「止めるのも面倒だったからな。 モイライ同士なら何とかなろうと思って放置した。」
IIZE 「まったく!! お前の役目はモイライの手助けだろうに!」
YUI 「あっ、あのぉ。飯綱って、飯縄権現様達ですか??」
IIZE 「わし等を知っているのか?」
YUI 「はい!! 私達、倭国の遠ーーーい未来のモイライです!!」
IIZE 「なに? 同郷のモイライとな? それでは、尚更申し訳ない!! おぬし等の手助けならなんでもするぞ!」
MOA 「え?え? 由結はこの人達を知っているの?」
YUI 「うん! 狐様に乗る神様って由結が調べた中で2人いたの。 1人がさっき会ったダキニたん達ね。 で、もう1人が上杉謙信さんや武田信玄さん達が戦勝の神として信仰していた日本の神様で、東京の高尾山薬王院とか数か所で奉ってる飯縄権現様達なの。飯縄明神とも言いうんだよ。フランスのパリにあるギメ東洋美術館にも、白狐様に乗ってて左右にちょっと小さいカラス天狗を従えてる木彫りの像が展示されてるんだぞ。」

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/60/Izuna_Gongen_the_circumstancial_appearance_of_Mount_Izuna.jpg

IIZE 「ほほぉ。 おぬし等の時代では、わし等は神として言い伝えられているのか。 それを聞いて安心したぞ。」
IIZS 「したぞ!」
IIZT 「したぞ!」
YUI 「安心ってどういう事ですか?」
IIZE 「今のわし等は、まだ神では無い。」
MOA 「あっ! ホントだ! 完全覚醒者だけど、神様じゃないよ!」
IIZE 「その通りだ。 しかし、今わし等が敵対しているのは、倭国のいにしえからいる土蜘蛛といった神々達でな。 今のままでは勝てぬのだ。 そこで大日如来の加護を受けようとしたが・・・あのチョビ髭クソオヤジ!大事な時に女の尻を追いかけてフラフラと居らぬ!! そこで、自力で昇華すべく知恵を授かろうと“始まりのモイラ”に会いに来たのじゃが、無下に追い返されてしまった。 そこで少しでも手掛かりをと思ったが、この有様だ。」
IIZS 「有様!」
IIZT 「有様!」
MOA 「でも、戦勝の神になるんだから、大丈夫だね♪」
IIZS 「だいじょび!」
IIZT 「だいじょび!」
IIZE 「あぁ、わし等は未来に語り継がれる神になるのか。 それを聞き、安心して帰れる。 して、おぬし等、常世に入りたいが入れぬと申しておったな。 由結と最愛の2人は覚醒者か、そして・・・すぅ は・・・。」
SU- 「えーと。 愉快で楽しい一般ピーポーです。」
IIZE 「ピーポーとは? たしかに、モイラの力が覚醒しておらぬ。 しかし・・・こんな常世の付近まで覚醒しておらぬ者が来れるのもおかしい。 すぅ はわしと同じ『紡ぐ者』であろう。 こっちに来てみろ。」

 飯綱がそう言うと、すぅ の手を握っり、「ぬぬっ?!」と唸った。

IIZE 「すぅ、おぬし本当に覚醒したいか?」
SU- 「うん! したい!! だって、仲間外れはイヤだもん。」
IIZE 「普通なら、今ので半覚醒するはずだが、何かが邪魔して半覚醒せぬ。 覚醒せぬ様に、何かが施されておるな。・・・本当に覚醒したいのだな。由結と最愛の2人はどうだ?」
YUI 「自分達の事が知りたいから、“始まりのモイラ”に会いたいのですが・・・すぅちゃんどうする?」
MOA 「覚醒しない様に封印されてるって事?・・・すぅちゃん覚醒しない方が良いんじゃない?」
SU- 「ヤダ!ヤダ!ヤダ!ヤダ!! 絶対に今、今覚醒したぁーーーい!!!!」
IIZE 「うーん。 ここで出会ったのも運命か。 今覚醒する為にわし等と引き合わせたのかもしれんな。 鬼が出るか蛇が出るか。 強引に蓋を開けてみるか。 お前等も手伝え。」
IIZS 「りょーかい!」
IIZT 「りょーかい!」

 そう言うと飯綱は、すぅ を肩幅で足を開き真っ直ぐに立つ様に指示をした。そして、妹達に すぅ の下腹部とヘソの辺り、喉と眉間に片手づつ手を添える様に指示する。

IIZE 「手が一つ足りないな。 ハクでは無理か。 覚醒者2人で1人分とするか。 由結と最愛、おぬし等2人は すぅ の胸に手を添えろ。」
YUI 「すぅちゃん! 帰ったら一緒に練乳チューチュー吸おうね! 納豆も食べようね!」
MOA 「あぁ、これはこれは。 言葉で表すと・・・不憫?」
SU- 「シクシク。」
IIZE 「こらこら! その胸ではない。 心の臓の上に2人て手を重ねて添えるのだ。 わしは会陰から頭頂に向けて、気を流し込むぞ。 由結と最愛は初めてだろうな。 そうだな、自分の体中を巡る血液を明確に想像しろ。 そして手の下にある すぅの心の臓を想像するのだ。 わしの合図と共にフッと一気に息を吐き、想像した自分の血液全てを手の平から一気に すぅ 心の臓に流し込め。」

 由結は左手を すぅ の胸の上に、最愛はその手の上に左手を重ねた。そして、2人は目を瞑り言われた通りに血液が体中を巡るのを想像する。それに伴い由結と最愛は自分の体温が少し上がるのを感じていた。
 飯綱は、すぅ の頭の上に右手を置いた。そして左手を股の間に差し入れ、上と下から押さえ付ける様に少し力を入れた。

SU- 「そ、そんな所に手を!! イヤン♪」
IIZE 「こら!うるさい!! モジモジ動くな!! よし。 それでは一気に気を流し込むぞ。 ひぃ・ふぅ・みぃ、今だ!!」

 由結と最愛はフゥッと息を口から一気に吐き出しながら、想像する血液を手から すぅ の心臓に叩き込むイメージをした。 そのイメージした血液が下から押し寄せる強い流れにぶち当たり、一直線に頭の天頂まで流れ、今度は頭頂から股まで下がりグルグルと頭頂から股の間を循環する。その様なイメージとして由結と最愛の2人の頭に添えた手を伝い流れ込んでくる。

SU- 「にょひょひょひょひょひょわわわわわぁぁぁ!!!」

 すぅ の体が、ガクガクと震え続け、下げていた両手が肩の高さに上がってゆく。由結と最愛の手の平がどんどん熱くなる。 由結と最愛の頭の中にイメージが流れ込み続ける。イメージの中で5人が手を添えた すぅ の体の部分に花の蕾が現れ、気が循環するスピードが上がるのに合わせて、その蕾の花弁が開いて行く。 そして、循環する気を吸い上げる様に上から紫、青、水色、緑、黄、橙、赤の大輪の花が7つ咲いてゆく。

SU- 「あがががががっ!!! のわわわわわっ!!!」
IIZE 「よし! あと最後の仕上げだ! 一気に回すぞ!!」

 その飯綱の言葉と共にイメージの大輪の花が閃光を放ちながらギュルギュルと音を立て高速で回り出した。

   ドンッ!!!!!!

 すぅ の体に手を添えていた5人が、いきなり吹き飛ばされた。

IIZE 「な、何が起こった?!」
YUI 「・・・吹き飛ばされる直前の一瞬、大輪の花のから放たれる光が、黒い光に・・・漆黒の闇の光に変わった!!」
MOA 「虹の様な7色の大輪の花が、ぜ・全部・・・血の色の様な真紅の花に!!?」
IIZS 「ヤバッ!」
IIZT 「ヤバッ!」
IIZE 「あの子は? すぅ は大丈夫か?!」

 すぅ は5人が倒れる中、独り立っていた。 周囲に濃い闇を纏い、見えぬ十字架に磔られた様に両手を左右に伸ばし、手首は力なくだらりと下がっていた。 頭はうな垂れ、閉じた瞼の両目尻からは赤い血が流れていた。この黒と白の色の無い世界では、その深紅の色はより一層見てはいけない色の様に感じられた。すぅ の指先がピクンッと動き、閉じられた瞼がゆっくりと開いてゆく。血に濡れた真っ赤な瞳が虚ろに彷徨う。
 由結と最愛は、すぅ に駆け寄りたいが、体が動かない。完全覚醒者の飯綱達もまた、すぅ の放つオーラに飲み込まれ動けずにいる。
 すぅ の右手が磔から剥がされる様に、ぶらんと下がった。そして、続いて左手も同様に。
 由結と最愛、そして飯綱の3人は、すぅ の動きから目が離せないでいた。
 すぅ が一歩二歩と幽鬼の様に歩を進める。

HAKU 「クオォォォーーーーーンッ!!!!」

 突然にハクの遠吠えが鳴り響いた。
 すぅ の体がピクンと震え、虚ろな瞳がハクを捉えると、突然にハクに向かって飛びかかった。

SU- 「よぉーし、よし、よし♪ もふもふぅ~ん♪ もふもふぅ~ん♪ サフェードォ。じゃなかった、ハクゥ~ン。 超痛かったよぉぉ。 顔笑った すぅ をペロペロしてちょ♪」
YUI 「あ、あれ?」
MOA 「す、すぅちゃん?」
SU- 「ハクってさぁ、やっぱりサフェードの子供?」
HAKU 「さぁね。」
SU- 「親子でしょ? 同じ匂いがするよぉ。 フゴォ。フンゴォ。 もふもふ♪もふもふ♪」
YUI 「やっぱり、いつもの すぅちゃん??」
MOA 「鬼や蛇は出ちゃってないの?」
SU- 「鬼や蛇は出ませんでしたが、目から赤いの出ちゃいました。 ハクの背中で顔をこすって綺麗にしちゃおう♪ ぐりぐりぐり♪」
IIZE 「ふぅぅ。 覚醒はとりあえず成功したようだな。 完全覚醒者になってもおかしくないのだが・・・。 半覚醒すらしていない状態からやったからなのか?」
YUI 「あっ! ホントだ!! すぅちゃんも覚醒者になってる!!」
MOA 「ホントだ!! あれ? さっきより、こまかく状態が見れるぞ。 すぅちゃんは覚醒者の1段階目って感じだな。 で、由結が覚醒者の3段階目って感じか?」
YUI 「最愛も覚醒者の3段階目って感じだぞ。 なんでこんな風に細かく見れる様になったんだ?」
IIZE 「ふむ。 不思議な事に由結と最愛の覚醒者の度合いが上がっているな。 まぁ、完全覚醒者になる道はまだまだ長く遠いがな。」
YUI 「この覚醒者の中の段階って何段階位あるんですか?」
IIZE 「100段階位だったかな?」
MOA 「げげっ。 先長っ!」
SU- 「そう言えば、すぅ って飯綱さんにこの服装の上からとはいえ、お股さわられたんだった! 殿方にさわられるなんて、もうお嫁にいけな~い!!」
MOA 「なに言ってるんだ、肉体じゃない精神体なんだから平気じゃね?」
IIZE 「おいおい、おぬし等何をいっておる。 わしは女だぞ!!」
YUI 「飯綱さん達は男でしょ?」
IIZS 「ウチ等も女だ!」
IIZT 「ウチ等も女だ!」
IIZE 「この頬当てが悪いのか? ほら、お前達も外せ。 モイライなんだから姉妹に決まってるだろう?」
SU- 「あ゙っ! ホントだ!! 女性だった! 『わし』とか言ってるからてっきりイケメン3兄弟かと思い込んでたよ。チェッ!」
MOA 「なに残念がってるの? もしかして抜け駆け狙ってた??」
YUI 「こらこら、話しが脱線してるぞ。 すぅちゃんが覚醒したなら、神域に入れるかな? さっきの場所ってどこだっけ?」
IIZE 「覚醒が進んだ由結と最愛なら、現世と常世の境界を見る事は出来ぬが、空気の違いを感じる事は出来るはず、このまま運命の流れに逆走する様に進んでみろ。」
MOA 「手を繋いで3人で進んでみようよ。」
SU- 「またガラスに貼り付くのはヤダなぁ。 由結と最愛が先に行ってよぉ。」
YUI 「そうだね。 由結と最愛が進むから、すぅちゃん 後からついて来てね。」

 由結と最愛が20m程歩いたところで、急に空気が変わった様に感じた。何がどう変わったかは説明できぬが、例えるなら酸素の濃度が上がった様なそんな僅かな感覚だった。

MOA 「すぅちゃん。 ここが神域との境目だよ。 ゆっくり歩いて来てみて。」
SU- 「で、どこから神域??」
YUI 「えーっと。 もう、すぅちゃんがいる所が神域だヨン♪ おめでとう!」
SU- 「えっ? えっ? えっ? やったーーっ! これで“始まりのモイラ”に会えるね!! このまま会いに行っちゃおう!!」
IIZE 「ちょっと待て。 2点ほど助言をしておく。 おぬし等はどの“糸”辿り“始まりのモイラ”に会うつもりだ?」
MOA 「えっと、このオレンジ色に輝く“糸”です。」
IIZE 「ふむ。その“糸”は正解だ。わし等もその“アポロンの糸”を辿った。 で、ここからが助言だ。 アポロンがモイライに会う直前に行き、アポロンをモイライの前から追い返せ。」
YUI 「なぜ、そんな事を?」
IIZE 「やってみれば分かる。 わし等はアポロンが帰るタイミングでモイライに話しかけた。 その為に機嫌が悪く、無下に追い返されたのさ。」
MOA 「なるほど。 でもう一つの助言は?」
IIZE 「モイラの屋敷と屋敷から繋がる作業場の洞窟この2箇所以外絶対に寄り道をするな! 何が起こってもだ! どこにも行かず誰にも会わず『運命の間』戻れ! この姿での死はそのまま肉体の死に繋がる。 相手は神だ。 この姿を見る事も出来るし攻撃も受ける。 神々の戦いは領域の奪い合いだ。 お前らの領域はその精神体がある範囲だけだろ? その領域を能力ごと奪われるぞ! つまり喰われて死ぬという事だ。 肝に銘じておけ!!」
YUI 「わ、わかりました!!!」

 飯綱は、名残り惜しそうにハクをもふもふ♪する すぅ を眺め見た。

IIZE 「最後に一言二言だけ すぅ と2人だけで話しをさせてくれないか?」
YUI/MOA 「は、はい! 向うで待ってます。」
IIZS 「最愛と戦いごっこしてる!」
IIZT 「由結と戦いごっこしてる!」
HAKU 「席を外すか。」
IIZE 「いや、ハクは導く者として一緒に話しを聞いててくれ。」

 由結と最愛、そして飯綱の妹達は30m程離れた所で、戦闘ごっこを始めた。先程の本気の戦闘と区別がつかぬ程に真剣に戦っていたが、攻撃が当たりそうな時は寸止めを行っている様だった。
 ハクは座り、すぅ はハクの隣りでハクにしがみ付き、もふもふ♪を繰り返している。
 飯綱は、すぅ とハクの目の前で腰を下ろし、すぅ の頭をゆっくりと撫でた、何かを確認する様に。

IIZE 「やはりな。 すぅ の中には『紡ぐ者』の力以外に別の力が宿っているな。 ・・・そうか。新しい神話が生まれるんだな。 すぅ おぬしの力で人類の変革が始まる。 ・・・進化を待つ事に痺れを切らしたか。それとも進化の舵を修正する為か。」
SU- 「なんの事を言っての?」
IIZE 「わしにもわからぬ。 おぬしは、過去にない特別なモイラらしい。 人々の運命を紡ぐ力以外に何か別の力が備わっていそうだ。 意図的なのか、それとも偶発的なのか。 ハクよ。 導いてやってくれ。」
HAKU 「面倒事は嫌いなんだがな。 やれやれ。」

 すぅ と飯綱の会話は終わり、由結と最愛を呼び寄せた。
 最愛は再びオレンジ色に輝く“アポロンの糸”を掴む。

IIZE 「それでは、気を付けて常世に行くんだぞ。」
IIZS 「行くんだぞ!」
IIZT 「行くんだぞ!」
YUI 「はい! 行って来ます。」
MOA 「それでは行くよ! 神々の世界に!」
SU- 「しゅっぱーーーつ♪」

 そして、『運命の間』から、すぅ達の姿が消えていった。
 すぅ達を見送ると、残された飯綱達も自分達の世界へと戻って行った。倭国のいにしえの神々と戦う為に。


【物語の物語 ⑩ -始まりのモイラ-】

 飯綱の助言から、飯綱達が現れた日時より、後の日を選択しようと〝アポロンの糸”を探った所、飯綱達が現れた日を境に数日連続でモイライの元を訪れていることが分かった。アポロンを拒絶した理由も知りたいが、日を置き過ぎると更にモイライ達が不機嫌になる可能性もあると考慮し、飯綱達が現れた翌日のモイライと会う直前を狙って、常世に飛び出す事にした。
 『運命の間』内の神域から常世に出た3人は直ぐに四方を警戒した。 すぐ近くにアポロンがいる筈だったのと、アポロンとモイライ以外の神々と出会わない為であった。
 3人は『運命の間』から左薬指の“糸”は解除せず、固定したまま常世に出ていた。3人で思い思いに歩きながら周囲を窺う。3人は地に降り立った場所は庭園だった。右手の丘の上に神殿のような屋敷が見える。建物外周を柱が立ち並び石造りの屋根を支えていた。その柱はエンタシスを用いており、下部から上部にかけて徐々に細くなる縦溝の入った石造りの円柱だった。その屋敷から石畳の道が3人の足元を通り抜け下りながら左に続いていた。庭園は、広葉樹が所々に生い茂り、芝は綺麗に短く刈られている。石畳の周辺には白、黄色、ピンクの花が咲き、風に揺れる。見渡す限りのとても広い敷地だった。
 その時、屋敷の裏口から1人の男が出てきた。鼻歌交じりで石畳を歩き、すぅ達3人に近づいてくる。
 石畳から一番離れていた最愛の元に すぅ と由結が集まる。

MOA 「あの人がアポロンさんだよ。」
YUI 「こっちに向かってくるって事は、その石畳の先に“始まりのモイラ”達がいるって事かな? どうやって追い返そうか?」
SU- 「なんか、白い布を巻いただけで、ちょっと目のやり場に困る人だね。」
YUI 「ダメだ! 相手が男の人だと緊張して、しゃべれなくなりそう! 話なら最愛が得意でしょ?」
MOA 「最愛だってヤダよう。 すぅちゃんお願い!!」
SU- 「ムリムリムリムリ! こんな時のスーパーモアちゃんでしょ?! ほら、お願い!!」

 そう言うと すぅ と由結で、最愛の背中を押した。
 最愛は後ろを何度も振り返り、ブツブツと文句を言いながら、芝生の上を歩き石畳に近づいて行った。
 石畳を歩くアポロンの手前僅か3mの所で、最愛は自分の左踵に右足のつま先を引っ搔けて、コロリンと転んだ。その姿をみて、すぅ と由結が慌てて最愛に駆け寄る。

APO 「おや~ん? 何も無いところで、転んじゃったのぉ?」
MOA 「わかるでしょ?」
APO 「・・・はい!! って大丈夫かい? 手を貸そうか?」
MOA 「いや一人で立てますから!」
SU-/YUI 「最愛、大丈夫?」
MOA 「いつもの“只転び”だから、大丈夫! 」
APO 「ところで君たち、昨日会った子達じゃないよね? でも雰囲気がなんか似てるなぁ。」
MOA 「はい、昨日の人達とは友達です。 アポロンさんの昨日の話を先程聞き、ここで待ってました。」
APO 「おや~ん? 僕の事待ってたの? ファンか何かかい?」
MOA 「いえいえ、昨日モイライさん達をかなり怒らせた様ですね。 私達が相談に乗れれば、モイライさん達を怒らせずに済むかと思い。」
APO 「あれ~ん? 僕ってモイライちゃん達怒らせちゃったの? 知らなかったよぉ。 じゃーそう言うなら、相談に乗って貰っちゃおっかなぁ。」
YUI 「こいつの話し方、なんかムカつくね。」
MOA 「由結! シッ!!」
APO 「ん~~ん? なんか言ったかぁい? じゃー、早速話すよぉ。 僕が罰ゲームで仕えに行ってる先の王様がねぇ。 なんか、死んじゃいそうなんだよぉ。 な・ん・で、モイライちゃんにチャチャッと治して貰っちゃおうっかなぁって、お願いに来てるの。 そしたらね、『出来るか!!さっさと帰れコノヤロー!! ついでに死ね!!』って言うのさぉ。 なんでかなぁ?って思って3時間位その場でダラダラゴロゴロしてから『また明日ぁ~!』って昨日は帰ったのさぁ。」
YUI 「やっぱり、こいつムカつく!!」
APO 「ん~~ん? なんか言ったかぁい?」
MOA 「いえいえ、ではアドバイスしますね。 モイラの力でその人を助ける為には、『決定した死の運命』を他に移す作業しか出来ません。 なので、その人の代わりに命を落としてしまう方が出るので『出来ない!』って怒られたのだと思いますよ。」
APO 「なーるほーどねぇ。 代わりを立てればOKって事ねぇ。 今から帰って見繕っかなぁ。 で、明日また来よぉ~ッと。 サーンキュー♪」
MOA 「だから、出来ないって言ってんだろ!!」

 そんな『出来ない』の言葉を聞かず、アポロンはフラフラと鼻歌交じりで帰って行った。
 その後ろ姿を苦笑いで手を振って見送る。

SU- 「とりま、追い返しに成功したね!」
YUI 「あいつが、3時間も近くでゴロゴロしてたら、怒り爆発するかも。」
MOA 「じゃー、この石畳を下ってって“始まりのモイラ”達に会いに行こっか!!」

 アポロンの追い返しに成功した すぅ、由結、最愛の3人は、気分よく石畳と芝生を蛇行で行ったり来たりしながら駆け下りていった。駆け下りた先には山肌の露出した断崖があり、石畳は断崖に大きく空いた洞窟の入り口へと続いていた。洞窟の入り口に立ち、中を様子見る。 中は吹き抜けが有るのか明るく、採光が取れていた。 そして中からは、激しい怒鳴り合うような声が鳴り響いていた。まるで、突貫の工事現場の様に。
 由結は すぅ の肩にしがみ付く、すぅ が最愛の肩にしがみ付く、最愛は手をバタバタさせながら後ろの2人にグイグイと押されて進んで行く。入って直ぐ広い空洞があり、岩肌の床には湧水で出来た川が流れ、至る所に鍾乳石で出来た天然のベンチや椅子が出来ていた。空洞の奥には鍾乳石の柱が何本も天井と地面を繋ぎ出来上がった部屋の様な場所も見える。その奥の部屋から怒声が鳴り響く。
 3人は繋がったまま、大きな鍾乳石の柱の陰から様子を見ようとコソコソ移動した。柱の陰から顔を出し覗こうとした矢先、怒号の様な大声が鳴り響く。

ATR 「そこに隠れてるの、バレてんぞ! 出てこいコノヤロー!!」
KLO 「この世界に現れた時から丸見えだ! バカヤロー!!」
LAK 「クロートー! テメー、手が止まってんぞ! タコヤロー!!」
KLO 「テメーの作業がおせーから、止まってやってんだ! バカヤロー!!」
LAK 「ヤんのか?! タコヤロー!!」
KLO 「かかってこいよ! バカヤロー!!」
ATR 「無駄口叩いてねーで手動かせ! 今日のノルマ終わんねーぞ! コノヤロー!!」

 3人は口を開いたまま顔を見合わせた。あまりに“始まりのモイラ”が想像とかけ離れ過ぎていて呆然としていたのだ。

MOA 「華と莉音みたい。」
YUI 「う、うん。女子プロみたいだね。 菊地プロ、対抗出来そう?」
MOA 「む、無理。 『かかってこいよ』って言ってたよ。すぅちゃんなら対抗出来るんじゃない?」
SU- 「ゼッタイ無理! とりま、モタモタしてたら殴られそうだから、殴られる前に出て行こうか。」
YUI/MOA 「う、うん。」

 3人は、ガチガチに緊張した状態で、先程と同様に連なったまま“始まりのモイラ”達の前に現れた。3人共に腰が引けてるので、連なる姿は現実逃避行号の乗客の様であった。

ATR 「おや? 昨日の娘達とは別人だなコノヤロー!!」
MOA 「あっ、はい! 昨日来た飯綱さん達とは、ここに来る前に『運命の間』で会いました! その時にアポロンさんに対してモイライさん達が困ってたと聞いたので、今ここに来る前の石畳の所でアポロンさんと話し、丁重にお帰り願いました!!!」
LAK 「おっ?! この娘達、気が利くじゃねーか! タコヤロー!!」
ATR 「アポロンのチンタラヤローを追い返すたぁ、礼を言わなきゃなんねーな! コノヤロー!!」
KLO 「こっちのノルマが終わったら、話しを聞いてやるぞ! 6時間後だ! バカヤロー!! あっ!アトロポスのヤロー、サボってやがるな! バカヤロー!!」
ATR 「茶ぐれー飲ませろ! コノヤロー!! ところで、お前達はさっさと戻ってノルマこなさなくて平気なのか? コノヤロー!!」
YUI 「あのぉー。 ノルマってなんですか?」
ATR 「なに言ってんだ? コノヤロー!! 紡いで!捌いて!切る!に決まってんだろうが! コノヤロー!!」
LAK 「アトロポス! 休憩なげーぞ! タコヤロー!!」
YUI 「アトロポスさん続きいいですか?? その作業“糸”が自動でやってくれてるので、特別な時以外はやらない様です。 今まで会って来たモイライ全員そうでしたよ。」
ATR 「なに馬鹿な事? 今まで会いに来たモイライはそんな事一言も行ってねーぞ! コノヤロー!!」
KLO 「何かしゃべる前に『仕事に戻れ!』って全員追い返してたからじゃねーか?! バカヤロー!!」
ATR 「もしかして娘よ。 本気で言ってるのか?! コノヤロー!!」
LAK 「寝る間惜しんでひたすら『捌く』から解放されてるのか! タコヤロー!!」
MOA 「生まれてこの方、自分で捌いた事がありません。」
KLO 「なに?!?! 全員作業緊急停止だ! バカヤロー!!!!!」
ATR 「ちょちょちょっと、お前、『断ち切る者』だろ? お前の薬指から出てる“糸”とお前の頭を触らせてくれねーか? コノヤロー。」
YUI 「はい、いいですよ。」

 由結は、アトロポスの前に行き、頭を下げて、左手を前に出した。それに合わせて、すぅ はクロートーの前に行き由結と同じポーズを、最愛はラケシス前に行き同様に頭を下げ左手を上げた。
 クロートー、ラケシス、アトロポスの3柱は恐る恐る、3人の“糸”を右手で触れ、左手を頭の上に乗せていった。頭を撫でる様に左手を頭頂から眉間へとずらす。
 クロートー、ラケシス、アトロポスの3柱の瞳からボロボロと涙がこぼれる。3柱は3人から両手を外し、右手で自分たちの“糸”を掴み、左手の人差し指と中指を立てた状態で人差し指の指先を自分の眉間に当てていった。
 その様子を すぅ、由結、最愛の3人は黙って見続けた。3柱の左手人差し指が眉間から離れて行く。

ATR 「あっ、あっ、あっ! 自動で切られていくぞ! コノヤロー!!!!!」
KLO 「こ、こんな事が! バカヤロー!!!!!」
LAK 「ついに、自由だ! タコヤロー!!!!!」

 クロートー、ラケシス、アトロポスの3柱は抱き合って喜んでいた。そして3柱が離れるとすぅ、由結、最愛の3人に抱き着いてきた。

KLO 「お前達、呼び名をなんと言うのだ?! 恩人の呼び名を教えてくれ!!」
YUI 「『断ち切る者』の由結です。」
MOA 「『割り当てる者』の最愛です。」
SU- 「『紡いで歌う』SU-METAL DEATH!! あっ、また言ってしまった。 すず香って言います。 すぅ って呼んで下さい!」
LAK 「わしらの通り名は知っているな。 わし等は本名を持たぬ。 そのまま通り名で呼んでくれ。」
ATR 「久しぶりにこの作業から解放されたぞ。 追われ続け心に余裕が無くなってたのだな。 開放されて初めて気付いた。 して、お前達、褒美は何が欲しい。」
YUI 「あっ『ヤロー』口調じゃなくなりましたね。 この精神体の状態なので、物を貰っても持ち帰れません。 なのでお話を色々と聞かせて貰いませんか?」
KLO 「そんな事で良いのか? どどーーんと神の一員にすることだって出来るのだぞ! わし等はこれで心置きなく・・・くぅっ!」
MOA 「私も すぅちゃんも、今日この“糸”が見える様になったばかりなのです。 今の覚醒者の状態ですら、心が付いて行けてません。 なので、心が付いて行くだけの知識が欲しいんです。」
LAK 「なるほどな、作業から解放されたわし等は今、何もする事がない。 あぁ、幸せだ。 という事で、お前達の質問に何でも答えてやる。 この世の真理を知りたければ脳に叩き込んでやるぞ!」
YUI 「いや、真理までは! とりあえず、モイラの生い立ちから教えて貰えませんか?」
ATR 「生い立ちを語れとは、照れ臭い事だな。 まず、わし等3柱はニュクスから生まれた。」
MOA 「ニュクスって誰?」
YUI 「夜を司る女神よ。 ゼウスが尊敬し恐れたと言われる女神だったはず。」
ATR 「その通りだ。 全てはカオスという無限の空間を司る最原初神から始まる。 カオスは宇宙が誕生する土壌だな。 このカオスから細胞分裂する様にガイア、タルタロス、エロースの3柱が誕生する。 いや、誕生と言うよりも発生に近いな。 この3柱の原初神発生が宇宙の誕生だ。 ガイアは大地と生命を司り、タルタロスは死後の世界である冥界より更に深い奈落を支配する存在として生まれる。 エロースは性愛と言った種族繁栄の感情を司る。 生命を司るガイアは次々と神々を生んでいった。 その為、殆どの神々はガイアという女神の血筋となる。 もちろん人類もガイアの血筋と言っていい、まぁ微妙なのだが。 神々は原初神に近い血筋程、強力な能力を持つ神々となる。 血が濃いと考えれば良い。 ちなみに全知全能と言われるゼウスはガイアの孫にあたる。 そして3柱の原初神誕生後に、最原初神カオスが細胞分裂という形ではなく2柱の子を産む。エレボスという地下世界の暗黒を司る神と、そして夜を司るニュクスと言う女神だ。 先程由結がゼウスがニュクスを恐れていると言ったな。 ゼウスはガイアも恐れている。 それはこの2柱の女神が『精確な予言能力』を持つからだ。 わし等はそのニュクスから生まれた。 ゼウスが恐れる未来を見る力をニュクスから引き継いでな。」
YUI 「うん。 調べた通りです。 ところで、私が調べた中に、モイラはゼウスの娘達でもあるとありました。 真実ですか? ニュクスとゼウスの間の子達なのですか?」
KLO 「半分正解で半分間違いだな。 私達はニュクスから生まれた。 この誕生の時、父親はいない。 ニュクス単独でわし等を生んだ。 そしてその後、ゼウスとその2番目の妻であるテミスとの間で再誕生する事となる。 ゼウス、あのクソオヤジを父親とする時、母親はテミスとなるのだ。」
SU- 「言ってる意味がわかんないよぉ。」
LAK 「別の角度から話そう。 神々が常に戦っているのは知っているか?」
MOA 「ダキニたんが言ってた。 モイライは神々の大戦の時に駆り出されるって。 神々の敵は神々だって。」
LAK 「そうだ、神々が戦う理由は2つある。 覇権争いとバランス調整だ。 覇権争いはそのままだ、神々の王の座を巡り、親兄弟で争う世代交代の為の戦いだ。 子が父の軍勢を倒し王になる。最初の神々の王は、ガイアの息子であり夫であったウーラノスだ。 この2柱の子供たちにティターン12神がおり、その12神の末子クロノスにウラーノスは男性器を切られ敗北する。 そしてクロノスが二代目の神々の王となるのだ。 ちなみにわし等の第二の母親テミスはティターン12神の1柱だ。 クロノスは、姉でありティターン12神の1柱であるレアーとの間に6柱の子を儲ける。 その子らの末子がゼウスだ。 ゼウスはオリュンポス12神を率いてティターン神族を打ち破り、三代目の神々の王となる。 その後、ゼウスの事が大っ嫌いなガイアはゼウスを倒すべく2度ほど大戦を仕掛ける。 1度目は巨人との戦いであるギガントマキア。 そして2度目はわし等の知る最後の大戦だが、ガイアがタルタロスとの間に最強の怪物テューポーンを生みゼウスにぶつけてきた。ゼウスはテューポーンに敗れ散々な目に有ったが、わし等モイラがテューポーンに毒の実である『無常の果実』を食わせてテューポーンを力を奪い取り、ゼウスが何とかテュポーンを封印して勝利を収めたのだ。 ところで、お前達の時代の神々の王もゼウスのクソオヤジなのか?」
YUI 「モイラ大活躍ですね! 私達の時代も神々の王はゼウスだと思いますよ。」
LAK 「・・・そうか。」
MOA ヒソヒソ「それにしても、昼メロ以上にドロドロだねぇ。」
SU- ヒソヒソ「骨肉の争いってヤツだね。」
LAK 「オホン、続きを話すぞ。 次にバランス調整の戦いだ。 こいつが厄介でな。 神々は火と水、死と生、夜と昼と言った様に司る属性が反する神が別々にいる。 単純に闇側と光側とは分けれぬ複雑な関係だが、仮に闇側の力の強い神と、光側の力が強い神で分けたとする。 この両軍が世界のバランスを保つために戦い続けておる。 どちらが正義でどちらが悪と言う物ではない。 どちらもこの世界を構成する上で大事な神々だ。 しかし光は闇から生まれ、昼は夜から生まれた。 先程アトロポスが言った様に世代が最原初神カオスに近い者ほど強力な神々となる。 自然と闇側の神々の力が勝ってしまうのだ。 ここで困った事が起きる。 闇側の力の方がゼロの力の影響が強いのだ。 ゼロとはつまり“無”だな。 闇側が勝ち続けると世界は“無”に引っ張られ世界が縮小してしまう。 そこで、闇側の神々の力を弱める為に光側の神々は闇側の神々に戦いを挑み続ける。 ここで大事なのは勝つ為に戦っているわけでは無い事だ、闇側を弱らせる事が目的なのだ。 闇側の神々が完全勝利すれば、世界は闇と無に包まれ消滅してしまう。 逆に光側の神々が完全勝利してしまうと、光に溢れ過ぎてしまい、人間どころか神々さえも住めぬ世界となる。 それは、基本的に誰も望んでおらぬ。 例外はあるがな。 今現在もその戦いは継続してこの常世で行われており、現状は闇側との力の差を光側の圧倒的な物量で補い、かろうじて光側が押し切っている形だ。 生と死で言う『生の力』は光側に有るのでな。 故に宇宙はゆっくりと広がり続けておる。」
SU- 「ふーーん。 なんだか大変だなぁ。」
ATR 「ところがな、このバランスが崩れる事がある。 それが覇権争いといった大戦だ。 大戦の場合、闇側と光側とか関係なく、利害や立場で別れてしまう。 そうすると、別の神に領域を奪われ吸収されてしまう神々が現れる。 大戦が終わった後、光側の物量が減り闇側の力を弱体化させる事がしばらく出来なくなるのだ。 その事は現世にも影響が出る。 大戦中の戦いによる影響に更に追い打ちをかける様に、死や闇と言ったものが現世に蔓延するのだ。」
MOA 「神々の戦いに間接的に人間達も巻き込まれてしまうのね。」
KLO 「・・・その内に間接的ではなくなるがな。」
YUI 「えっ? どういう意味ですか?」
KLO 「人間達は、神を模して造られた。 光の力が強い神の血肉を用いてな。 元々人間は、神々にとっての人形的な物で、遊び道具と思われていた。 この遊び道具に神々と同じ様な知恵を授けようと考える神がいた。 神の血肉を用いてと言ったが、その血肉を提供したのが、そいつだった。 その神がまず実行したのは、この人間という神々の遊び道具に『知恵の実』を食わせて、神と同様に自分の判断で物事を決めれる様にした事だった。 その事と同時に、その神は人間に神と異なる素晴らしい特徴を付けた。 その特徴ってのが『寿命』だよ。 その特徴と使命を与え、神々の実験場である現世に人間を解き放った。 ・・・その神は初めからその使命の為に人間を作ったのかもしれんな。」
MOA 「人間の『寿命』が素晴らしい特徴なんですか? その使命ってなんですか?」
KLO 「『寿命』か。 あぁ、素晴らしいね。 神々にとってはとても魅力的だ。 で、その神はプロメテウスを落しいれ人間に炎の扱いを憶えさせたり、自ら人間に手を差し伸べたりしながら、数千年かけて大事に人間を育てていった。 最近では、アポロンの様に罰を与える神の反省の場として人間の元に送ったりもしている。 その神が人間達に肩入れする行為に対して批判を述べる神々もいる。 だが、何の目的でその神が人間を育てているのかまで気付く神々は誰もおらん。 『運命を見る』能力を持つわし等を除いてな。 他の神々が気付いた頃には、おそらく手遅れだろうな。 人間は現段階でそれなりの霊格を備え始めてる。 そこまで行くと人間に対して批判的な神々も、安易に人間を排除出来なくなる。 自分達の出来の悪い分身に愛着が芽生えてしまうからな。 ・・・稀に訪れるモイライを見て実感するよ。 この計画に参加して良かったってな。」
YUI 「な、何の事を言ってるのですか? その神って誰ですか?」
KLO 「ガイアから派生した神々はな、永遠に近い命を持っている。 寿命を持たぬ故に自然に死ぬ事などあり得ぬ、完成された生き物なんだよ。 完成・・・され過ぎたな。 神々は生まれた瞬間からあらゆる知恵を持ち、生まれ持った能力で戦い、そして働き続ける。 人間に使命を与えたその神はな、世界のバランスを操作するのに夢中だったよ。 闇側に対抗しようと光側の勢力に強力な武器を与えようとした。 ところが、その武器はガイアの血筋の神々には適応しなかった。 神々が完成され過ぎていた為とガイアが定める『運命』と言う名の未来予測に縛られていた為だ。 ところがだな、思わぬところに武器の適応する者達がおったのだ。 それが不完全な人間達と、ガイアの血筋から外れながらも『運命』を操作する力を持つ、わし等モイライだったのだ。」
YUI 「だから、その神とは誰なんですか? 武器とは何なんですか?」
ATR 「ゼウスは『進化』を禁断の兵器として使おうとしているのさ。」

YUI 「『進化』を兵器に?? 寿命は、転生は『進化』する為の機構って事なの? 人間は『生命の樹の実』を食べぬように現世に追いやられた訳ではないの?」
ATR 「神の血肉にて造られた人間は元々寿命を持ってなかった。 『知恵の実』とはゼウスが作ったプログラムだ。 知識と寿命によって『進化』を与える為のな。 『生命の樹の実』とは『進化』の暴走を止める為の制御プログラムと言われているが、見た者は誰もいない。 その正体を知るのはゼウスだけだろう。 ゼウスも『可能性の力』とは恐ろしい物を考えたものだ。 神が現状から変化を求める為には、他の神を取り込むしかない。 ゼウスが第一の妻メーティスを呑み込み『全知』を手に入れた様にな。 『進化』とはガイアのみが独占する新たに無から有を生み出す力の一部のはずだった。 他の神々が神を産んでも自らの力をその新たな神に分け与える『力の分割』でしかないのだ。 ガイアは意図せず、その独占していた『生み出す力』の一部分をゼウスを産む際に分け与えてしまっていた。 おまけにガイア自身、その事に気付いていなかった。 ゼウスが自分の中に『生み出す力』が潜んでいた事に気付いたのは『全知』を手に入れた時だった。 ゼウスはそれを隠し続けたが、第三の神々の王として君臨する際に、ガイアはゼウスに『生み出す力』が潜んでいる事に察知してしまった様だ。 ゼウスは人間を生み出す際と先代の神々の王クロノスとの戦いの際に兵器開発でその力を利用した為だな。 それ故にガイアは急にゼウスを忌み嫌い排除する行動を取る様になったのだ。 『知恵の実』とはゼウスの『生み出す力』を『可能性の力』として人間用にプログラム化した物だ。 それを取り込むことにより未知なるの未来の扉『進化』が開く。 寿命と転生は『進化』を動かす為の機構なのだよ。」
YUI 「寿命という限りがあるから生命は創意工夫を努力し『進化』してゆくって事ですか? 」
ATR 「あぁ、そう言う事だ。 他の神々は現状しか知らぬ故、何の疑問もなくダラダラと日々を過ごしておる。 やる事って言ったら戦う事とヤル事ばかり、奴らと言ったらホントにサルと変わらん! それに比べ人間達は素晴らしい、創意工夫と共に感動と苦悩といったキラキラと輝く日々を過ごしておる。 あぁ、羨ましい!! わし等はゼウスと契約し再誕生する事により『進化』とそれを動かす『寿命』を手に入れた。 代わりにゼウスの『運命』を“糸”で探る事が出来なくなったがな。 問題はわし等の『紡ぐ、捌く、切る』の役目をどうやって転生後に引き継ぐかのみだった。 転生後も記憶を引き継ぐしかないのか?それでは『寿命』という宝の意味が無くなるのでは?キラキラ輝く日々は手に入らないのでは?と思い悩み続けておった。 お前等に出会いそれも解決する事が出来たよ。 これで『進化』を起動する事が出来る。 人間の転生の輪を利用して生れ変りを繰り返し、人間達と共に限られた寿命を謳歌し『進化』する事が出来るのだ。 この腐り澱んだ日常とおさらばだ!!」

 すぅ、最愛の2人は、ぽかぁ~んとしていた。話が大き過ぎて理解出来ていないのだ。由結だけが「やっぱり!」「なるほど!」とか言いながら納得していた。

SU- 「ねぇ、ねぇ、由結。 すぅ にも理解出来る様に簡単に説明してよ。」
MOA 「うん。うん。」
YUI 「簡単に言っちゃうぞ。 ゼウスさんが闇の軍団と戦ってて、闇の軍団が強くて大変なの。 だから、人間達がもっと何回も生まれ変わって進化したら、一緒に戦いましょうって言ってるみたい。 で、他の神様達は進化出来ないけど、モイライと人間は生まれ変わりながら日々顔笑って進化できるから、どんどん強くなっちゃぞ! モイライも人間達と一緒に限られた人生楽しんじゃうぞ♪って事だね。」
SU- 「モイライと人間ってスゴいんだねぇ。」
KLO 「ざっくりだが、正解だ! 人間とモイライは凄い!」
LAK 「お前等のモイラの力が覚醒し始めてるって事は、お前等の時代に大戦が起こるかもしれないな。 必要が迫った時、モイラの『紡ぐ、捌く、切る』以外の能力を使用可能にするつもりだ。 その必要度に応じて徐々に思い出す仕様にする。 お前等がここに来れる様になっていると言う事は必要が迫っている証拠だよ。 そして、神に昇華した場合のみ、今までのモイラとしての記憶をぼんやりと蘇る様にするつもりだ。 今まで転生で発展と蓄積させた神の力と日々の記憶を神々との戦いでフルで活用できるようにな。」
SU- 「はっきり思い出すんじゃないんですか?」
LAK 「神々の様に全ての記憶を鮮明にストックする事は、デメリットの方が大きいと思っている。 恨みまで残り続けるからな。 忘れるってのも人間の素晴らしい所だ。 美味しい同じ物を後日に食べて、再び新たに感動が出来る! 人間として折角転生するのに、神になったらその感動を手放すなんで、ゼッタイにイヤだ!!」
MOA 「はぁ。」
ATR 「あと、緊急的に神へ昇華させる方法も作るつもりだ。 そのスイッチは・・・。 仕方ない、ゼウスのクソオヤジに持たせるか。 わし等の『転生』に向けて色々と設定が必要となるな。 準備に忙しくなるぞ! ゼウスのクソオヤジとまた密会して話し合わねばな。」

APO 「お~~~い!! 大変だよぉ~~~ん!!!」

 いきなり、アポロンが走って洞窟に入ってきた。とてつもなく焦っている様だったが、のったのったと走りはトロ臭かった。

KLO 「お前、帰ったんじゃなかったのか?! バカヤロー!!」
APO 「帰ろうと思ったんだけど、モイライの領域から出られないんだよぉ~ん!! で、おや~ん?って思って領域の周りを見たら、ヘラさんの軍勢に囲まれてたんだよぉ~ん!! この領域が外部から封じ込められてるよぉ~ん!!」
YUI 「ヘラってゼウスの最後の奥さんですよね?」
ATR 「あぁ、ゼウスが浮気しまくるから、とんでもなく嫉妬深い鬼嫁になっちまった。 浮気相手だけでなく、その浮気の手助けをした者まで、手加減知らずにボッコボコにする! ちっ! 『進化』の計画をゼウスと密談してたのが、浮気と勘違いされたのか?! 昨日もわし等の領域を出て直ぐの場所でヘラの軍勢と揉めた何者かがいたと聞いた。 それが、決定打となったのか? やばいぞ! この領域内にいる者すべてを袋叩きにする気だ!! おい、お前等!! 一刻を争う! 今すぐ『運命の間』に避難しろ!」
MOA 「もしかして、飯綱さん達が揉めたのって・・・。」
SO- 「たぶん、そうだね。 内緒にしておこう。」
SO-/YUI/MOA 「クロートーさん、ラケシスさん、アトロポスさん、大事な話しを沢山ありがとうございました!! 私達戻ります!!
KLO/LAK/ATR 「こちらこそ礼をいう。 ありがとう!! それでは、急げ!! 達者でな!!」

 すぅ、由結、最愛の3人は1ヶ所に集まり、薬指の固定を解除し“糸”を右手で掴んだ。足元の魔法陣が赤く輝きだす。

YUI 「よし、私達の現世に戻るよ!! えーーーい! あ、あれ?お、おかしいな、もう一度! とりゃーーーっ!!  えっ? なんで? なんで『運命の間』戻れないの?!?!」

 足元の魔法陣は時計回りに回転する事はなく動かない。赤い輝きもノイズが入る様にジジジッと音を立てながら乱れていた。

ATR 「アポロン! お前、この領域が封じ込められて出られないって言ってたな?!」
APO 「う、うん。 そうだよぉ~ん。」
ATR 「空間封鎖の出来る神が軍勢にいるのだ。 不味い事になった! わし等だけなら何とかなるが、クソッ!! お前達を逃がさねば! クロートー、ラケシス! あとアポロン! ヘラの軍勢を迎い打つぞ!! お前等はここに隠れて、いつでも『運命の間』に逃げれる様に待機していろ!! アポロン、ヘラの軍勢のいる領域の境まで案内しろ!!」

 アトロポスを先頭に、クロートーとラケシス、アポロンの4柱は領域の境に向かった。
 すぅ、由結、最愛はその場に取り残された。3人は咄嗟の対応が取れる様に、再び左薬指に“糸”を固定させる。

YUI 「ど、どうしよう? すぅちゃん。」
MOA 「私達を逃がす為にモイライさん達、戦いに行っちゃったよ! すぅちゃ~ん、どうしよう?!」
SU- 「モイライさん達とアポロンさんだけなら、きっと逃げれたんだ。 すぅ達がいたばっかりに・・・。 『ここにいろ』って言われたけど、じっとしてなんかいられない!! すぅ達も行くよ!!!」
YUI/MOA 「うん!!」

 すぅ達3人は石畳を駆け上り、屋敷の正面へと反時計回りに周り、柱の陰に隠れた。屋敷の入り口から50m離れた所に石で出来た2本の柱が立っていた。その柱の向うにヘラの軍勢がいた。その柱がモイラの領域の境界の様だった。2本の柱と屋敷の中間にクロートー、ラケシス、アトロポスの3柱がいた。アポロンはというと、すぅ達が隠れている柱の反対側の柱の陰にしっかりと隠れて、おろおろしていた。

HPA 「あ゙ー、テステス!! ただいまマイクのテスト中ぅ!!」

 軍勢の先頭に立つ女神が声をあげた。凄まじく美人だ。美人だがドギツい系の美人だった。ゼウスの最後の妻ヘラだ。身に付ける金色の装飾はギラギラで、衣服も豹柄主体。髪は盛りに盛って半端ない。声は酒やけしているのかガラガラで、巻き舌口調。口元は真っ赤な口紅で彩られ下品な笑みを浮かべていた。

HPA 「おいコラ!! 泥棒猫3匹! ウチの旦那に手出したら、タダですまないのは知ってるよなぁ!! あ゙ぁん??」
ATR 「あんな、チョビ髭クソオヤジ、こっちから手出す訳ねーだろが! コノヤロー!!」
KLO 「わし等の仕事の件で文句を言いに行っただけだ! バカヤロー!!」
LAK 「ちゃんと調べてから出直せ! タコヤロー!!」
HPA 「コラコラコラ! この軍勢見て、調子こいた口利いてのかぁ?! 前々からお前等が気にいらねぇんだよ。 浮気が事実かなんて、どうでもいい。 火の無い所に煙が立とうが、煙が立てばタコ殴りだゴラァ!!」
ATR 「ちっ!!」
HPA 「自分の置かれた状況が、わかったみてぇだなぁ。 けっけっけ。 泥棒猫3匹捕まえたら、全員でいたぶってやんよ。 『消滅させてくれ』って哀願するまでなぁ。 そして、イジメて、イジメて、イジメ抜いてやる!! あたしの靴が血で真っ赤に染まるまで、舐め続けさせてやるよぉ!! おい者共!その境界の柱を叩き折れ!!」

 その号令と共に巨大な牝牛2頭が軍勢の奥から現れ、境界の柱に向かって角を立て何度も突進する。柱へ突進をする度に、モイライの領域内でビシビシと何かがひび割れる様な音が鳴り響き、2本の柱周辺の空間に亀裂が入って行く。

LAK 「ま、まずい! 境界が割れる!! 領域が浸食されてしまう!!」

 由結と最愛はその様子を緊張しながら見ていた。いつでも飛び出せる様にしゃがみ、息を整える。
 すぅの様子がおかしい。立ち尽くしたまま拳を握りしめ、プルプルと震えていた。

MOA 「あの女、ムチャクチャじゃない!」
YUI 「浮気とか関係なくイジメ抜くだなんて! でもどうしたら? 相手は神々なのよ、私達の力じゃ、どうにも出来ない!」
SU- 「・・・イジメは・・・ダメ・・・」
MOA 「すぅちゃん??」
SU- 「・・・ダメなの・・・ゼッタイに・・・」
YUI 「・・すぅちゃんの格好が。」

 すぅの言葉に合わせて、光がすぅの周りに集まってくる。METAL RESISTANCEのジャケット写真に似た黒い布の様な恰好がエナメルの様に艶やかに輝き出す。すぅの目深に被っていたフードが上がってゆく。顔、そして頭と現れてゆく。下ろされていた髪が、後頭部で束ねられてゆき、赤い髪留めが出現した。それに呼応するかの様に、由結と最愛の纏う黒い布も輝き出す。

SU- 「イジメ、ダメ、ゼッタイ!!!!!」

 叫ぶや否や、突然に すぅ は駆け出していた。そして、モイライ達を背にとヘラの前に立った。突然の事に由結と最愛は動けないでいた。すぅ は大きく息を吸う。そして、渾身の力でシャウトした。 始まりの音444Hzが空間に鳴り響く。渦を巻く様に、周囲の光と闇が すぅ に集まってゆく。

SU- 「あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!」

 その声で、反射的に弾かれた様に由結と最愛が すぅ の元に全力で走り出す。由結と最愛のフードが、はだけていく。2人の髪が左右に束ねられていき、赤い髪留めが出現してゆく。
 突然の事にモイライの3人も、そしてヘラの軍勢すらも固まり戸惑いざわついていた。
 最愛が すぅ の直ぐ左側に、由結が すぅ の直ぐ左側に寄り添う様に辿り着いた。

HPA 「な、なんじゃこの小娘達は??」
KLO 「お前等、あれだけ隠れていろと言ったのに! 消滅されてしまうぞ! 死んでしまうのだぞ!」

SU- 「・・・神様なのに・・・ここにいるのは、みんな偉い神様達なのに。 昨日まで人間達と違って一つになれてると思っていたのに。 こんなにも日々、争っていたなんて、イジメがあるだなんて。」
YUI/MOA 「・・・すぅちゃん。」
SU- 「争いは、すぅ が止める!!」

 突然の少女達の出現に、神々はどうしたものかと二の足を踏んだ。
 一瞬の静寂の中。
 すぅ は大きく息を吸い、語りかける様に歌いだした。

   No reason why
   I can't understand it
   Open your mind
   We can understand it
   Please let me know
   もし、答えがあるなら
   Let me know
   教えて欲しい
   時を越えて、僕らは行く、眩い光の中で
   僕らの声、僕らの夢、僕らのあの場所へ

 すぅ 歌声に合わせて、由結と最愛もコーラスを入れる、「一つになれ!」と心を込めて。
 すぅ の周り渦を巻き集まっていた光と闇が静かに止まり、歌声に呼応するかの様に光と闇の輝きを増してゆく。
 由結の上げた両手の人差し指に光の輝きが集まり、拡散される。
 最愛の上げた両手の人差し指に闇の輝きが集まり、拡散される。
 神々は、今何が起こり始めているのか分からず、3人の歌声を聞くしかなかった。
 すぅと由結と最愛の体が空中へと徐々に浮かび上がってゆく。

   We are THE ONE
   Together
   We are the only one
   You are THE ONE
   Forever
   You are the only one
   We are THE ONE
   Together
   We are the only one
   You are THE ONE
   Forever
   You are the only one

 すぅと由結と最愛の熱く語りかける歌声は、神々の頭上から光と闇の輝きの粒となり、キラキラと降り注いだ。
 愛や憎しみといった感情を越えてキラキラと。
 一つである事を教える為に。
 一つであった事を教える為に。

   I feel it now
   The time has come for us
   Believe it now
   It's time to get ready
   Tell me why
   もし、終わりが有るなら
   Tell me why
   教えて欲しい

   We stand in a circle pit
   Side by side
   We stand in a circle pit
   Raise your hands
   僕らの声、僕らの夢、僕らのあの場所、彼方へ
   ららら、ららら、らららららー

 軍勢の神々が、手に持つ武器をその場に落してゆく。次々へと。
 そして、頭上で語り歌う3人にゆっくりと手を上げてゆく。

   We are THE ONE
   Together
   We are the only one
   You are THE ONE
   Forever
   You are the only one
   We are THE ONE
   Whenever
   We are on your side
   You are THE ONE
   Remember
   Always on your side

 モイライの3柱は肩を組み、領域の外へ歩いて出て行く。
 それを迎え入れる様に、ヘラは両手を広げる。そのヘラの瞳には大粒の涙がこぼれた。
 モイライとヘラは左手を肩を組合い、右手を上げる。満面の笑みを浮かべて、すぅ達3人に向かい、右手を大きく上げ続ける。
 アポロンは泣いていた。大声を上げて、ぼろぼろと泣きながら両手を上げた。

   We are THE ONE
   Together
   We are the only one
   You are THE ONE
   Forever
   あああああー
   ららら、ららら、らららららー
   ららら、ららら、らららららー
   ららら、ららら、らららららー・・・

 神々は、いつの間にか歌っていた。
 由結と最愛の歌声に合わせて「ららら」と声を合わせて。
 長く生きてしまった事により、心に奥にしまっていた何かを思い出しながら。
 降り注ぎ続ける光と闇の輝きを浴びながら、この時神々は一つになっていた。
 “無限の無”しかなかった頃、小さな産声と共にたった一つの小さな宇宙が誕生した時の様に。

 歌が終わり、3人は地上に降り立つ。
 ヘラは3人を抱きしめた後、何も言わずに軍団を連れて帰って行った。
 アポロンは、「また来るよぉ~ん。」とだけ、モイライの3人に伝え、すぅ達3人に見えなくなるまで手を振り続けながら歩いて帰って行った。
 モイライとすぅ達は笑顔で、皆を見送った。

KLO 「今の歌は、なんだったのだ?」
LAK 「歌により神々の運命を一度に変更しおったのか? 何が起こったのか分からない。」
ATR 「すぅ。 恐らくお前が『進化』したモイラだと思う。 で、由結と最愛、お前等2人は、 すぅ の力の増幅、拡散、反動を制御する役割を担ってるのかもしれない。 正直、私達モイラと異なり過ぎて、よくわからない。 どちらにしろ、神々すら凌ぐ恐ろしい力だ。 上手く制御しろよ。 じゃないと世界が壊れちまうからな。ははっ♪」
YUI 「私達は、貴女達“始まりのモイラ”とそんなに異なるのですか?」
ATR 「『進化』が原因なのか、それともお前等3人が特別なのか。 あぁ、ホントに未来が楽しみでしょうがないよ!! こちらがお礼を言う事の方が、増えすぎたな。 また、ここに遊びに来い!! お前等なら、どんな時でも大歓迎だ!!」
LAK 「魂の力を消費し過ぎているな。 そろそろ、自分達の世界に帰りなさい。」
ATR 「最後に一言。 もしもお前等の時代に大戦が起こる様だったら、間違いなくゼウスのクソオヤジがお前等の前に現れる。 その時は、遠慮なしにぶっ飛ばせ!! そして、4代目の神々の王になっちまえ!!」
SU-/YUI/MOA 「ヨンヨン?4代目の王ですか??」
KLO 「内緒だがな、わし等の『進化』の隠れた目的はソコだ。 はははっ!!」
SU-/YUI/MOA 「・・・そ、それはちょっと。」
LAK 「心の片隅に置いておいてくれ。 では、しばしのお別れだ!!」
SU-/YUI/MOA 「はい! ありがとうございました!! See you!!」
KLO/LAK/ATR 「See you!!」

 そして、すぅ、由結、最愛の3人は自分達の世界へと戻って行った。
 3人が神域から『運命の間』入る際、モイライの領域から離れた所に一つの影があった。その影に気付いたのは由結1人だけだった。


【物語の物語 ⑪ -運命の糸-】

 レッスン室の小さな二重窓から差し込んでいた陽光は黄昏色に染まっていた。もう間もなく日が沈むのだろう。
 床には、すぅ、由結、最愛の3人が寝ていた。
 “糸”が、光を増しながらフルルと震える。
 不意に床に魔法陣が現れ、赤い閃光を放った。
 寝ていた3人が、ゆっくりと顔をあげた。
 由結はチラッとレッスン場の入り口を見る。

SU- 「ただいまぁ。・・・えへへ♪」
YUI 「ふぅ。 帰れたね。 たーだいま。」
MOA 「ただいまっと。 よいしょっ・・・おっとっとっと。」

 立ち上がろうとした最愛がよろめき、その場にペタリと座り込んだ。そして、尻ポケット辺りをポンポンと叩く。その途端に慌てた様に、自分の上半身をパタパタと手の平で叩き始めた。

MOA 「ない?! ないないない!!」
YUI 「え? どうしたの?」
MOA 「なくなってる?! なくなっちゃってるよぉ! 最愛の豊満な・・・ウギャァーーーッ!!」
SU- 「どうしたの?」
MOA 「すぅちゃん! 大変だよ!! 由結が力石みたいに、ジョー戦の力石みたいに・・・ぎょえぇぇぇーーーっ!! すぅちゃん!! ペラペラだよ! もはや紙だよ!!! 補給しなきゃヤバいよ!!!」

 3人は、長テーブルに這う様に進むと、コンビニ袋に入った食材を一心不乱にむさぼる様に食べ漁った。菓子パン、おにぎり、豆腐と食材がどんどん消えていく。あっという間にコンビニ袋は空になった。

SU- 「・・・足りない。」
MOA 「う、うん。 全然足りないね。」
YUI 「コンデンスミルク・・・練乳チューチュー! 買い占めなきゃ!!」

 3人はアミューズスタジオを飛び出し、道を渡って東へと歩いてゆく。緑の看板のコンビニ入り食材を漁る。コンビニの駐車場の端に行き、立ったまま1ℓ豆乳を3人で一気飲み。そして、しゃがみ込み、カップ麺、おにぎり、サンドイッチ、チーズと消費し、再び立ち上がり、1ℓ牛乳を3人横並びで一気飲みした。練乳の白いキャップをクルクル開けて、銀の内蓋を剥がす。最愛は「深爪し過ぎた!」と言いながら、小さな人差し指の爪で内蓋をカリカリしながら苦戦する。ゴミをコンビニのゴミ箱に、キチンと分別して捨てる。

YUI 「練乳チューチューしながら、次のコンビニに向かうよ!!」

 3人はチューブの練乳を咥え、チューチューと吸いながら道沿いを更に東へと進んでゆく。青い看板のコンビニに到着し、ゴミ箱に吸い終わったチューブを3人揃って投げ捨て、店内に入る。レジで「袋はいりません!」と断り、レジシールを貼ったチューブを3本受け取る。その場で周りのビニールと内蓋を剥がし、チューブを咥えながらコンビニを出る。更に東に向かい「7」と書かれたコンビニ、そして更に東の青い看板のコンビニでも同様の事を行った。
 青い看板のコンビニをチューブを咥えながら出ると、道を挟んだ目の前には夜の駒沢公園が広がっていた。
 由結が、右上唇に付いた練乳をペロリと舐める。

YUI 「う~ん♪ ミルキー♪」
MOA 「由結、完全復活だね♪ ほっぺもいい感じ♪」
YUI 「えへへっ。」
SU- 「結局、ここまで来ちゃったね。 また公園内をちょっと散歩する?」
MOA 「そうだね。」

 駒沢公園交差点の信号を渡り、3人して練乳のチューブを咥えながら、夜の公園をぶらぶらと歩き出した。夜の駒沢公園はランナー達が走り、思った以上に人が多かった。周りに生える樹木を見ながら公園内を歩き続ける。誰から言葉を出そうかと牽制しながら。
 沈黙を破ったのは、すぅ だった。

SU- 「今日一日、色々あったね。」
MOA 「うん。 一日で起こった出来事とは思えない位に色々あった。 由結の一言から始まった冒険だよね。」
YUI 「巻き込んじゃった? 後悔してない?」
SU- 「ぜーんぜん♪ 由結が導かなくても始まってた事だよ。 由結も最愛も心配いらないよ。 長女の すぅ が守ってあげるから♪」
MOA 「ぷぷっ。 末っ子すぅちゃんがお姉さんぶってる! 最愛が一番遅く生まれたけど、モイライだと次女は最愛だ。 『割り振る者』のラケシスだかんね。 だから、最愛お姉さんも由結を守ってあげる!」
YUI 「・・・2人共、ありがとう。 この“糸”が見えてから不安だったけど、色々わかったおかげでアトロポスの役目も怖くなくなったかも。」
MOA 「『運命の糸』かぁ。」
SU- 「ところでさぁ。 根本的な疑問なんだけどぉ。 この『運命の糸』って何? 下は何処に続いていて、上は何処に行ってるの??」
MOA 「たしかに! 『運命の糸』って言葉で納得してたけど、なんだこれ?」
YUI 「なんだろうねぇ? 下はわからないけど、上がどこに繋がってるかはわかるよ。」
SU- 「わかるの??」
YUI 「うん、たぶん。 この奥に硬式野球場があったよね。明かりが来て無いからナイターやってないな。 見に行こっか。 向いながら、2つ面白い話をしてあげるね。」
MOA 「面白い話?」
YUI 「一つ目は、METAL RESISTANCEの初回限定のジャケットの写真あるでしょ? 精神体になった時と同じ黒い布を被った格好で写ってる写真。」
SU- 「あっ!カオナシ衣装のジャケ写ね♪ 『あっ。あっ。』どう? さっきまで精神体でカオナシ衣装を着続けてたから、更にモノマネ上手くなったでしょ?」
MOA 「はい、はい。 で、その写真が何か?」
YUI 「あの写真の背景にある物についてね。」
MOA 「背景って真っ黒でしょ? 足元に瓦礫があるから、神殿とか有るの? つーか見えないよ。」
YUI 「あの写真の明度と色彩をスマホやパソコンを使って上げていくの。 するとね。 背後に巨大な何かが見えてくる。」

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org796381.jpg

SU- 「『あっ。あっ。』」
MOA 「なにコレ??」
YUI 「周りに瓦礫があるからキノコ雲って不吉な考えもあるけど、由結は大木だと思ってる。おっきな、おっきな大木ね。 これが一つ目の話し。」
MOA 「なんか、よくわからないなぁ。 で、二つ目は?」
YUI 「『生命の樹』って知ってる?」
MOA 「“始まりのモイラ”さん達と話してたね。 なんだっけ? 『知恵の実』と一緒に出てきた様な。」
YUI 「うん。 旧約聖書にね、人間達の始祖アダムとイブはエデンの園の中央に生える知恵の樹の『知恵の実』を食べて善悪を区別する知恵を身に付けた。 エデン園の中央にはもう一本特別な樹が生えてて、それが『生命の樹』。その実を食べると神と等しき永遠の命を手に入れる。って書かれているの。で、ユダヤ教の神秘思想のカバラではね『生命の樹』が『セフィロトの樹』として表されていて、10個のセフィラっていう部位で体系化して図面で表現してるの。」
MOA 「なんだか、よくわからないけど、それで?」
YUI 「各セフィラには、象徴する数字や色や金属とか色々と設定してるのね。」
SU- 「『あっ。あっ。』」
YUI 「で、第4のセフィラである、ケセドなんだけど・・・。象徴する数字はモチのロンで『4』!!」
MOA 「まぁ、第4だしね。 ヨンヨン♪」
YUI 「・・・そしてぇ。」
MOA 「何もったいぶってるの?」
YUI 「なんと、象徴する金属は、錫(すず)なの!!」
SU- 「『あっ。あっ。』・・・ん? 呼んだ??」
MOA 「『4』の『金属』は『すず』って・・・。」
YUI 「そう!『モイモイ』は『メタル』で『すぅちゃん』と繋がってるって事!!」
MOA 「なにその偶然?! キャーッ♪」
YUI 「もはや必然?! キャーッ♪」
SU- 「なに?なに? カオナシの練習してて聞いてなかった!! 教えて!教えて!!」
YUI 「と、言ってる間に硬式野球場に着いたよ。 やっぱり、今日の夜は使ってないね。 じゃーフェンスを乗り越えるよ。」

 由結と最愛はガシガシとフェンスを数mよじ登り、ヒョイと硬式野球場内の敷地に降り立った。すぅは、入り口側に回り込んで、入り口ゲート横の塀を「ヨイショ」と乗り越え、あまり苦労せずに敷地に入った。

YUI 「すぅちゃんの冷静な判断、さすがです。」
SU- 「いやいや、先日レッスンサボってここで草野球のナイター見てたんだけど、その時に入口を見てまして。 なので、簡単な入り方を知っておりました。」
MOA 「だったら、最愛と由結がフェンスを登り始めたら、すぐに止めろよっ! 飛び降りて、足の裏ジンジンしてんだろうが!!」
SU- 「登る姿がカッコ良くて。 えへへっ。」
YUI 「じゃー、グランドに出ようか。」

 3人はグランドの真ん中に出た。樹木に囲まれていたが敷地外の外灯の光も有り、普通に辺りを見回せた。
 最愛は「都会の夜は明るいなぁ」と今更ながら感じていた。
 すぅは「暗いと眠くなっちゃうな」と今日の疲れと満腹感を感じていた。

YUI 「『運命の間』の中で“糸”を使ったり出来るけど、あの世界の“糸”って精神体が感じる“糸”の力の象徴でしかないんじゃないか?って感じたの。 でね、『運命の間』って“糸”の中の世界なんじゃないか?とも思った。 “糸”って中をキラキラと光が上に向かって流れているでしょ? 『運命の間』の景色に少し似てない? モイライが遠い未来を見れないのは、遠い未来まで生き続ける人間を見つける事が出来ないから。 未来へ繋がる“糸”が見つけられれば、遠い未来も見れるのかも。 例えば神々の未来の運命を辿るとかね。 でも、未来を見ちゃうって楽しみを奪われちゃうのに等しいでしょ? あまり見たくないよね。」
MOA 「由結の言う通りだね。 未来が見れたら楽しみがなくなるし、顔笑れなくなりそうだ。」
YUI 「そうすると、この“糸”の行先は・・・。 すぅちゃんは1塁側のファールポールに向かって、最愛は3塁側ファールポールに向かって後ろに下がって行って、由結はホームベースまで下がるから。」

 “糸”が2塁ベース辺りをふわふわと漂っている。

YUI 「すぅちゃん、最愛! 合図で右手を前に出して、ゆっくりお互いに“糸”を引っ張り“糸”が太くなる様に膨らませるよ! 運命を検索する時に“糸”を円盤状に膨らませるでしょ? あのイメージね! いくよーーっ! いっせーのせ!!」

 “糸”が3人に引っ張られ、徐々に太くなってゆく。糸から紐へ、紐から柱へ、柱から大木、そして巨木へと。
 “糸”は屋久杉の様な巨木へと変わり、巨木と同じ様に上に行くに従い枝分かれして行く、その枝の先も細い枝へと分かれ、どんどん細分化されてゆく。糸の細さになるまで分かれると、その先は夜の闇にキラキラと溶け消えて見えなくなる。その姿は、まさに巨木そのものだった。

YUI 「もう、広げなくていいよ! どう? 巨木みたいになったでしょ? きっと細くなり過ぎて見えなくなった先は、世界中の人々みんなに繋がってるんだよ! 人々だけじゃなく、神々にもね! これが『運命の糸』の本当の姿なのかもね! 『運命の糸』は『セフィロトの樹』、つまり『生命の樹』なんだよ! みーんなが、一つに繋がってるの! 『運命の糸』は『THE ONE』なんだよっ!!」
MOA 「ホントだ!! METAL RESISTANCEのジャケ写の背景にある巨木と一緒だ!! これが『THE ONE』なんだねっ!!!」

 すぅは、大声で話し合う由結と最愛の声を聴きながら、右手を『THE ONE』に向けた状態で座り、そして寝そべった。

SU- 「キレイだなぁ。 運命って。 生きてるってキレイだなぁ。 キラキラと輝きながら、みんな生きてるんだなぁ。」

 寝そべり見上げたまま、にこにこと笑う。すぅは深呼吸する様に樹木に囲まれた都会の夜気を吸い、そっと瞳を閉じた


【物語の物語 ⑫ -物語-】

・・・。
・・・。

  「・・・。」
  「・・・・・・。」
  「・・・・ん・・て。」
  「・・・ゃん・・て!」
  「す・・ゃん・・てってば!」
  「すぅ・ゃん、起・てってば!」

MOA 「すぅちゃん、起きろぉぉぉ!!!!」
YUI 「寝てんじゃねーっ豚野郎!!!!」

SU- 「ん? ありぇ?」
YUI 「あっ! やっと起きたよ!!」
SU- 「ここはどこ? わたしは、すず香?? 『THE ONE』はどこ行った???」
MOA 「よく、こんな所で! しかもこのタイミングで寝れるなぁ?! 信じられないよ!!」
SU- 「すぅ、寝てたの??」
YUI 「この大舞台の直前に! 舞台袖で待機中に寝ちゃうだなんて、ホント信じらんない!! 可憐のエピソードは真実だったんだね!!」
SU- 「“糸”は? 神々は?」
MOA 「寝ボケてないで、ちゃんと起きてよ!! ほら!青山さんがドラム叩き出した! 神々の演奏が始まったよ!! ほらBOHさん演奏しながら、チラチラ心配そうにこっち見てるよ! 神々だってウチ等がステージに出るのお待ちかねだよ!!」
SU- 「あれれ?夢だったのかぁ。 ・・・そうなのかぁ。 すぅ ね。 スゴい楽しい夢を見てたの。 色々な神様に会ってね。 サフェードってマザーがふわふわ♪のもふもふ♪でね。 楽しかったなぁ。 ・・・神々って言えばBOHさん達かぁ。 そうだよね。 BOHさん達、神バンドの皆さんが待ってるよね。」

YUI 「コラァーーーッ!! いい加減、ちゃんと起きろぉーーーっ!!!!!!」

SU- 「ひぃぃっ!」
YUI 「神々って言ったら、アポロンさんやヘラさん達に決まってるでしょ!! ほら、あそこで常世との境界こじ開けて参戦してくれてるよ!!」
SU- 「え? はにゃ??」
MOA 「昨日の夜に突然『この時代の神域に行って、みんなを呼んでライブ観て貰おう! 歴代のモイライも呼んじゃおう!』って言い出したの すぅちゃんでしょ? ほら『運命の間』を開いて、ダキニたん姉妹も飯綱姉妹も見に来てるよ! “始まりのモイラ”さん達だっているでしょ??」
SU- 「サフェードぉ!!! アポロンさん白塗りしてくれてる!! みーんなぁ!!! え?え? 夢じゃなかったの? ホントだったの?」
MOA 「まったく、前日に『運命旅行』するから本番前に疲れて眠っちゃうんでしょ? 昨日寝る前に練乳チューチューして、ちゃんと栄養補給したの??」
YUI 「ほら!寝ボケてないで、すぅちゃん気合入れて!! みんなが待ってる! 出番だよ!!」

 すぅ は、顔をバンバンと両手の平で叩いた。そして、由結と最愛にハグをし、“ライブ会場”という名の大戦の場を見つめる。
 舞台に向けたギラギラと輝く瞳は、もう寝ボケてなんかいやしない。これから始まる未来への期待と希望でワクワクしている。

SU- 「よーし! BABYMETALの神話は始まったばかりだ!! 全力で神話の世界を走り続けるよ!!!」
SU-/YUI/MOA 「はぁしぃーれぇーーーーっ!!!!!」

おしまい(仮)。


【物語の物語 ボーナストラック -正体-】

F~FG♭A♭D♭~♪
A♭D♭~A♭~♪
D♭~BーA♭~G♭~F~~♪

 アミューズ本社の廊下で鼻歌が響く。跳ねる様に歌う鼻歌は、その歌い主の機嫌が良い証拠だった。鼻歌の主は同じ音程を繰り返し、にやにやと笑う。
 その様子を、廊下の角から顔を半分出し、じぃっと見つめる1人の少女がいた。

KOBA 「のわぁっ!! ゆ、由結Pか?! そ、そんな所で、何してるんだ??」
YUI 「ずいぶんと、ご機嫌ね。」
KOBA 「そりゃそうだ! ライブは超絶大成功! デロの数字だって万々歳だぞ!! これが浮かれずにいられるかってんだ♪」
YUI 「ちょっと、話があるんだけど。 そこの小会議室取ってあるから、付き合いなさいよ。」
KOBA 「妙に感情を殺した様なその口調。 なんだか怖いんですけどぉ。」
YUI 「ほら、さっさと会議室に入って。」

 由結はKOBAの背中を押し、小会議室に押し込んだ。KOBAは由結の態度におろおろし、とりあえず入口近くの椅子に腰を下ろした。由結は、KOBA正面の奥の席にドカリと腰を下ろし、KOBAを目を細めてにらみ付ける。

KOBA 「な、なんだよぉ。 顔が怖いよぉ。 2人だけなの? スゥメタとモアメタは?」

 由結はKOBAの言葉にお構いなしで、まったく動かずにらみ続けた。

KOBA 「俺、由結Pに何かした?? 怒らせる様な事、なんかしちゃった? 何か指示と違う事した??」

 由結は、ぼそりとKOBAに疑問を投げかけた。

YUI 「お父さん、『神』でしょ?」
KOBA 「あんだって?」
YUI 「お父さん、『神様』なんでしょ?」
KOBA 「あ? あんだって?」
YUI 「聞こえないフリしてんじゃないよ! チョビ髭クソオヤジ!!」
KOBA 「えぇ~っ? 由結まで、その呼び方しちゃう??・・・あ゙!」
YUI 「由結・ま・で? までって言ったなぁ? 『か・み・さ・ま』なんだろぉ??」
KOBA 「い~んや! あたしゃ神様だよ!!」
YUI 「ちっ! やっぱり!! 『ゼウス』なんだね?」
KOBA 「は、はい。」
YUI 「ゼウス。シヴァ。大日如来。伏義。ヤハウェ。仏陀、キリスト。ぜーんぶ、お父さんなんだね?!」
KOBA 「は、はい。 すみません。」
YUI 「過去のモイラ達がみんな『父親ヅラするヤツには気を付けろ!』って行ってたんだよね。 クソオヤジ!!」
KOBA 「気付いちゃいましたか、由結Pさん。」
YUI 「モイラとヘラの戦いの時も、いたでしょ? あんなにチラチラ様子見てたら気付くわ! まぁ、すぅちゃんと最愛は気付いてないけどね。」
KOBA 「そ、そうですかぁ。 あの2人には内緒にして頂けると助かるんだけどなぁ。」
YUI 「別にいいけど。 初めから言うつもりもなかったし。 代わりにクソオヤジが知ってる事、教えなさいよ。」
KOBA 「内緒にしてくれるんだ、よかったぁ。 由結Pにだったら、教えるよ! 何知りたいの?」
YUI 「あの2人がいたら聞けない事よ。 すぅちゃんについて。 すぅちゃんってホントにモイラなの? 紡ぐ者のクロートーなの? モイラって三つ子の姉妹じゃないの?」
KOBA 「モイラじゃないって言ったらモイラじゃないし。 クロートーと言ったらクロートーだしぃ。」
YUI 「な、なによそれ?」
KOBA 「モイラの3姉妹は、初代は三つ子だったけど、それ以降は違うんだよ。 でも、基本的にほぼ同時期に生まれて、ほぼ同時期に寿命を迎えるんだけどね。」
YUI 「すぅちゃんは、2歳年上じゃない。」
KOBA 「あの時期、色々あってさぁ。 最原初神カオスの曾爺様が永い眠りから起きたと思ったら、ポコンと何か産んでまた寝ちゃたりね。 ほら世紀末ってヤツ? 色々あったのよ。 で、1997年に『運命の糸』に異変が起きるのよ。」
YUI 「『生命の樹』に? 『THE ONE』に異変??。」
KOBA 「あら? 由結Pったら『運命の糸』の正体まで気付いてんの? じゃー話が早いや『生命の樹』に花が咲いたんだよ。 でっかい花がね。 こりゃ『生命の果実』が出来るんじゃないか?って大問題になった。 『生命の果実』が出来るなんて神々の歴史の中で初めての事だったからな。」
YUI 「『生命の果実』って人間に永遠の命を与える物でしょ? 旧約聖書にも書いてあるじゃん。」
KOBA 「それは俺が、モイラ達と『運命の糸』を解析して作った人間用プログラムだろ? 人間達が進化して神々の戦いに参戦出来る様になったら与える為のプラグラム、それの単なる名称だよ。 それじゃなくて、オリジナルの『生命の果実』の事。 『生命の樹』ってさぁ。 『ガイアのへその緒』とも言われてんじゃん? だから俺、嫌われてるの知ってるけどガイアのバア様の所に行って聞いたのよ。」
YUI 「『ガイアのへその緒』?? 『運命の糸』ってガイアに繋がってるの?」
KOBA 「繋がってるかどうかは俺も知らないけどさ。 とりま、ガイアに聞いてみた。 そしたら『知らねーっ♪』だってさ。 あのババァ絶対に何か知ってるはずなのに! もし、ガイアが単独で産んだとしたら、ウラーノスの爺様と同レベルの特殊第2世代の神って事よ? ほぼ第1世代の原初神と力変わらない訳よ。 クロノスやテュポーンといった父親のいる通常第2世代と段違いなのよ。 そんなのが産まれて、また俺の敵になったら超絶ピンチじゃん! で、お前等の先代モイライ連れて『運命の間』調査に行く訳。 俺、モイライ再誕生させてんじゃん? だから俺も『運命の間』には入れるのよ。 で、見に行ったら、ホントに『運命の間』に入って直ぐの所に真っ赤な巨大な花が浮かんでるの。 茎や葉は無くて、花だけがふわふわと浮かびながら、周りの黒い闇の光を吸収してる。 マジかぁ?やっぱりガイアのババァ俺の敵を作ろうとしてんじゃん!こりゃマジヤベェ!って思って、当時のクロートーに『指でツンツンしてきて!』ってお願いしたのさ。 クロートーって紡ぐ者じゃん?光の力満載だから対抗できるかもって考えたのね。 で、お前等の先代モイライってのが当時、寿命間際の高齢でさ、ツンツンしようと近付いたら、自分の踵につまづいて、コロリンって転んでやんの。 くっくっく。 で、ここから大爆笑なんだけど、転んだ先に巨大花があって、花の真ん中に頭っから突っ込んだと思ったら、パックンって花びらが閉じて食べられちゃったの。 あーはっはっはっは!」
YUI 「おいコラ! 笑い事じゃねーだろ! つーか、ゼウスの方が光の力満載だろ?! お前がツンツンしろよ!!」
KOBA 「えーと、続き話していい? そしたら、急に花びらが萎み枯れ、光と闇を纏った実が出来た。 ホントに一瞬でね。 それがコロンと転がったと思ったら『運命の間』から消えちまった。 あわてて、現世に戻ったら、強烈な気配があって、それがヒュンと消えたのさ。 消えた先を辿ったら、スゥメタの母親のお腹の中にいる出産間際の胎児に宿ってた。 で、俺達が到着するのを待たずに、宿って直ぐ母親は出産したんだけど、その赤ん坊は、俺の力に対して敵意もしないし、ちゃんとクロートーの紡ぐ者の力も自動で発動してたからOKかな?ってなった訳。 でも俺を含めた第3世代を倒す圧倒的な力がいつ発動するか心配じゃん? だから、今まで様子を見続けてるのさ。 これが俺がスゥメタについて知ってる全部だ。」
YUI 「そ、そんな事が!! ホントに すぅちゃんって神々の中でも特別な存在だったんだね。」
KOBA 「スゥメタだけじゃなく、お前もだけどな。」
YUI 「へ? 由結も??」
KOBA 「お前が、生まれる直前に、先代の残りのラケシスとアトロポスが息を引き取ってな。 転生するのを俺の力でちょっと止めた。 モイラの役割に関しては、数日間俺が代わりに必死でやったよ。 手動でな。」
YUI 「なんで、そんな事をしたの?」
KOBA 「お前の誕生直後にヤバい事件が起こりそうだったからな。 それで、俺はこの世に存在する中で俺の次に光の力が多い存在を探した。 それが、お前。 母親の胎内から生まれる直前の由結だったって訳だ。 見つけた時、お前はまだ胎児だったからな。 今までのモイラと同様に正式手順でモイラの力を由結Pに引き継がせた。 モイラの力は俺の管理内にあったし、その後も基本的に俺の監視下に置かれるからな。 見守るのが楽なんだよ。 それで、光の力だけでは弱点の有る脆い存在になると判断した俺は、順番が異なるがアトロポスの『運命を断ち切る』という闇側に近いの夜の力を由結Pに宿らせ、俺の手元に転生前のラケシスを残すことにした。 ちゅー事で、白く光り輝きながら、ちょっぴり腹黒な赤ん坊の由結Pが誕生したという事さ。」
YUI 「そんな事が、由結が誕生する時に? でも、それだと光の力の強い普通のモイラなんじゃ? 順番が違うだけで特に特別じゃない気が・・・。」
KOBA 「えっ? 納得できない?」
YUI 「そういう訳じゃないけど・・・。」
KOBA 「特別な理由知りたい?」
YUI 「話してない事があるの?」
KOBA 「うん♪」
YUI 「な、なによ?」
KOBA 「由結Pのさ、『由』って漢字あるじゃん? この字ってさ『よりどころとされる者』って意味があるの知ってる?」
YUI 「まぁ。 知ってたけど。」
KOBA 「『結』って字は、そのまま結び繋げるだよね。 じゃーさ、人々や神々にとって『よりどころ』になって『結び繋げる』って事をしてきた偉ーい御方が存在するんだけど、誰だと思う?」
YUI 「・・・それを自分でいう? 『ゼウス』であるクソオヤジでしょ?」
KOBA 「せいーかぁーい♪ じゃー何で、その文字を由結Pが持っているのでしょうか?」
YUI 「へ?」
KOBA 「正解は、アトロポスの力を宿らせる時に、最低限だけ残して俺の『ゼウス』としての力をぜーーんぶ由結Pに渡しちゃたからでーーす♪」
YUI 「は?」
KOBA 「三代目神々の王としての力、今の俺にはありませーーん♪ その力は、ぜーんぶ由結Pの中に潜んでまーーす♪ ほら、いろいろ大変な事が起こりそうだしさ。 面倒じゃん? 顔笑れよ! 四代目神々の王!! ヨンヨン♪」
YUI 「なんですとぉぉぉっ?!?! チョビ髭クソオヤジィィィッ!!!!」

 バタバタバタバタ!
 バタン!!
 すぅ が突然会議室に飛び込んできた。

SU- 「あぁーーっ!! こんな所にいた!! お父さんの事、みんなが探してたよ!! あと、由結!! 最愛のプリン食べたでしょ?? 最愛、超怒って由結の事探してたぞ!!」
KOBA 「『生命の果実』がやって来たから、退散しようかな。」
SU- 「ん?」
YUI 「ちょちょちょ、ちょっと!」

 小会議室から、KOBAが出ようとする。
 扉を閉めようとしたが思い留まり、顔だけヒョコンと出した。

KOBA 「あっ! もう一個だけ伝え忘れたわ。 『1999年7の月』って知ってる?」
YUI 「ま、まだ、何かあるの? 恐怖の大王?」
KOBA 「おっ。 産まれる前の事なのによく知ってるねぇ。 俺の全知の力が覚醒し始めたかな? ここ最近、知識が異常に増えてるとかない? 特に神々の知識。」
YUI 「え? それって。 で、アンゴルモアの大王が何よ?」
KOBA 「由結Pはホントに横文字の発音がダメだなぁ。 『Sis.Anger』も『しす.あんごる』って発音するんじゃねーのか?」
YUI 「発音はどうでもいいでしょ?」
KOBA 「ふふっ。 最原初神カオスの曾爺様が産んだ物が、案の定ふらふらと『1999年7の月』に現世に落っこちてきた。 まぁ、10日程度予定より早かったけどな。 そいつは、ドォーンっと一発で常世も現世も『無』に還す恐ろしい力を持ってた。 俺はあわてて、残された力を使って前々から目星を付けてた胎児に封印し、ラケシスの力を付けて監視下に置いた。」

 バタバタバタバタ!
 バタン!!
 最愛が突然会議室に飛び込んできた。

MOA 「ゴラァァァァッ!!! 由結!! 最愛のプリン食べたでしょぉぉぉ!!!」

KOBA 「うひぃぃっ。 Angerモアちゃんまで、お出ました!! 由結! 最愛をあまり怒らせるなよ!! ドォーーンってされたら全部『無』だからな!! お前等の神話は、半端ねぇーな♪ 由結プロデュース委員長、宇宙の未来はまかせたぞーっ!! ではでは、お父さんは退散でーす♪」

YUI 「まっ、まっ、まっ、マジでぇぇぇぇっ?!?!」


物語の物語 おしまい(真)。


【あとがき】
 2016年2月19日21時、METAL RESISTANCEの収録曲が公表され、各曲の曲名から色々と妄想を膨らませ、妄想集団『小石蹴り部』でネタを書き続けていました。
 「シンコペーション」「GJ!」「Sis.Anger」「Amore-蒼星-」とネタを書き「Tales of The Destinies」についてネタを考え始めたのが2月23日の深夜、そして「The Destinies」が『運命の三女神』を指す言葉である事に気付き、一気にギリシャ神話について情報収集を行いました。
まぁ、調べれば調べる程に色々なオカルトチックな情報が出てくる出てくる。それをBABYMETALに絡ませて『小石蹴り部』の皆さんにネタとして紹介したいと思ったのが『物語の物語』を書き始めた動機でした。
 2月24日がまた仕事が暇で何もやる事が無く、仕事をしてるフリして昨日調べた事を元に一気にネタとして書き始めたのですが、その当時ネット上で『モイラ』に気付いた人が誰もおらず、とてつもなくワクワクした気持ちでの書き始めでした。先駆者的感覚が興奮状態となり、文章が進む進む。その進み具合は書き終わるまで継続するんですが、ホントに『神降臨』している様な感覚で進んで行きました。自分の意思とは関係なく、頭の中で登場人物達が勝手に話し勝手に行動してゆく。それをひたすら書き写す作業。自分自身が読者の様な感覚でしたね。その感覚から、変に使命感とかも出ちゃったりして(笑)。
 当初、5,000字で終わらせる予定がまったく終わらず、最終的には73,000文字を越えるのですが、実を言うとこれでも、短く短くと努力した上での最終文字数だったりします。格闘シーンは書きたい事の10分の1程度にしたし、中国編は丸々書くのを辞めたりしました。
 あと、テレビで高視聴を取るネタである『旅』『グルメ』『エロ』『子供』『外人』『温泉』全てを盛り込もうと企みましたが、結局『温泉』を絡ませる事が出来なかったりもしました。『エロ』を絡ませたのには賛否両論でた様ですが(笑)。
 色々と省いた理由は、単純に締め切りの問題です。最初は、3日程度書けば済むって思っていたのですが、最終的には1ヶ月ちょっと書き続ける事となったこの作品。3月10日頃にFOX DAY(4月1日)に書き終えると目標を付けたのですが、その直後にふと、METAL RESISTANCEを聞いたらイメージが違い過ぎて、とても読めた物じゃなくなるってな可能性に気付いてしまう。で、慌てて最終締め切りを3月28日としました。数時間だけ間に合いませんでいたが、ご愛嬌ですね。
 今回締切以外にこだわったのが、ツッコミ所を作らないって事でした。読んで下さってる方が、読んでて気になる事をネットを使って調べる。その時に「それ違くね?」って現実に戻される事を極力減らす様に意識しました。ファンタジーなフィクションでありながら、調べてみると確かにそう受け取れる。ってのが理想で、空想と現実の境目を物語が進んで行く様に情報収集はしっかりと行ったつもりです。まぁ、書きながらの情報収集なので、破綻している所も沢山あるとは思うのですがね。
 なんやかんやで、この『物語の物語』は3月29日のAM3時30分に見事書き終え連載終了させたのですが、METAL RESISTANCEが皆さんの手元に届く前に無事書き終える事が出来たのも、連載を読んでてくれてる方からの励ましの言葉があったからだと思います。本当にありがとうございました。
 読んで下さった方々が、METAL RESISTANCEの「Tales of The Destinies」を聞き『我らがThe Destinies』の歌詞を聞いた所で、この『物語の物語』を思い出しニヤリとして頂けたら最高DEATH!!
 最後に、連載途中で休眠しちゃった台本型BMホラー小説『チョークで書かれた道標』を早々に完結させる事を約束しますね。お楽しみに!
 それでは、読んで頂いた皆さん、BABYMETALのライブでお会いしましょう♪

 See you!!!!

2016年4月1日 M-CHARI-METAL