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ベビメタ小説-『CMIYC

-2015年7月-


「CMIYC」

SU-METAL「愛知かなぁ?高知かなぁ?」
すぅは一人、羽田空港にいた。連休を利用して久し振りの故郷広島への里帰り。いつもは新幹線を利用するのだが時間もあるし予定もないしで、マイルでも貯めて由結と最愛に差をつけようと考えた次第である。そんな心持ちだったせいか早速、神はすぅに試練を与えた。
SU-METAL「あった!広島便は………あれー?欠航してるじゃん!」
初便から広島空港は霧のため視界が悪く着陸が出来ず欠航していたのだ。しかし時間はあるけど予定はない、いわゆる本日自由人なすぅは運航再開までのんびり空港で過ごすことにした。いやらしい話、お金もある。早速カウンターで搭乗券の変更手続を済ませる。さすが海外で鍛えられて慣れたもんだ。思い切って夕方の便に振り替えたはいいが、いざとなると暇過ぎてやることがない。広い空港の散策も小一時間で飽きてしまった。
SU-METAL「仕方ない、もあゆいでも呼びつけるか…。」

「すぅは今、羽田空港にいます。17時半の飛行機で旅立ちます。このまま黙っていなくなるのも悪いかなと思いメールしました。お願いすぅを捕まえに来て!」

SU-METAL「とりま、これを送信しといて……っと。」
メールを受け取った2人は丁度待ち合わせ場所で合流をしたところ。朝からカラオケで8時間びっちり歌うつもりだった。
YUIMETAL「ねぇ、すぅちゃんから変なメール来たね…。」
MOAMETAL「本当だ…。暇だからかまってほしいんだろうね。」
YUIMETAL「空港にカラオケボックスないよね?」
MOAMETAL「ないない。無視無視。」
しかしそんな2人の顔色は次に届いたメールによって豹変させられることになった。

「CMIYC 2」

「まぁ………2人が来たとしても、すぅは絶対に捕まらないけどねー。」

YUIMETAL「カッチーン。ウチらもなめられたもんね。」
MOAMETAL「スーメタルなんか余裕で捕まえられるっつーの!」
YUIMETAL「どうする?……やる?」
MOAMETAL「もちろん!捕まえてくすぐりの刑に処してやる!」
見事すぅの作戦は大成功。早速2人はタクシーを拾い、車中で作戦会議を練り始めた。
YUIMETAL「厄介なのはすぅちゃん得意のオーラ消しよね…。」
MOAMETAL「たしかに……すれ違ってるのに気付かない恐れがあるもんね。」
YUIMETAL「とりま宣戦布告のメール送っとくYO!」
MOAMETAL「待ってろスーメタル!いろんなところくすぐりまくってやる!……でへへ。」

「すぅちゃん、捕まったら出発時刻ギリギリまでくすぐりまくってやるんだから。覚悟。」

SU-METAL「うひゃー、勘弁。こりゃ本気で逃げ切らないとw」
届いたメールを見たすぅは早速「絶対に見つからないとっておきの場所」を探すことにした。幸い大きな荷物は預けっ放しで身軽だ。空港第2ターミナルにいたすぅはここで相手側の出方を見る為に立体駐車場に移動する。ここの駐車場は第1と第2ターミナルの中間にあり連絡橋で繋がっている。そして地下からも地上からも移動できるので逃げ道も豊富だ。ただ、ずっといるにはとてもつまらない場所。
SU-METAL「電車で来るか?それともタクシー?」
そんなすぅに由結から一通のメールが届いた。

「羽田空港に着いたYO!タクシー料金は小林に請求するからね。」

さあ、狼煙は上がった。いよいよ羽田空港かくれんぼの幕開けだぁ!

「CMIYC 3」

YUIMETAL「まずは腹ごしらえだね。」
MOAMETAL「そうだね、余裕見せなきゃね。」
2人は第1ターミナルへと移動し、たまごかけご飯のお店に入った。
YUIMETAL「TKG2つくださーい。」
MOAMETAL「卵は2個までオッケーなんだ!」
そのJKの黄色い声に過剰反応した客が一人。もちろん我らがスーメタルだ。
SU-METAL「うわ!マジか?裏をかいて昼食タイムにしたらまさかのいきなりバッティングかい!」
すぅは2個目の卵を丼に落とすとシャカシャカと混ぜながら状況把握に努めた。2人は入口近くのカウンターに座っている。当然自分が先に食べ終わるだろう。2人に見つからないように出入り口に到達できたとしても会計時に気付かれる可能性も高い。かと言って2人がいなくなるまでここに居座るのも得策ではない。何故なら店の外には既に行列が出来始めている。回転率を下げてしまう行為などメタルクイーンがやってはいけない。
SU-METAL「ゲフッ、行くしかない!」
TKGをかっこんで意を決すると、すぅは伝票を持って2人の背後を通過する。ここは難なく突破できた。どうやら2人は空港マップのパンフレットを見て作戦会議に余念がない。伝票を渡しあとは支払いをするだけだ。
店員さん「500円になります。」
SU-METAL「安っ!」
しまった!思わず声をあげてしまった!だって安いんだもん。空港のご飯ってもっと高いイメージがあったなどと動揺しつつも500円玉でお支払い。まだ2人は気付いていない。
SU-METAL「領収書ください、小林で。」
この状況下でもすぅは節約を惜しまない。領収書を無事受け取るとそそくさと店を後にした。
YUIMETAL「ねぇ?今お会計してた人ってすぅちゃんじゃない?」
MOAMETAL「マジ?たしかに服のセンスがそれっぽかったけど…。」
YUIMETAL「どうする?追う?」
MOAMETAL「えー、最愛まだ卵1個しか食べてなーい。」

すぅはバス乗り場へと向かった。

「CMIYC 4」

結局あおさの味噌汁を追加した由結と最愛は当然すぅを見失っていた。そんな2人をあざ笑うかのようにすぅからメールが届く。

「ハーイ、モイモイ!ここはグレートな場所ね!カフェの中がプラネタリウムになってるの!由結ちゃん星見るの好きでしょ?待ってるわよん。暗いからいろんなことできそう、いっひっひ。」

MOAMETAL「スーメタルめ!国際線ターミナルだな!」
YUIMETAL「これは罠かも……でも今は他に手掛かりがないもんね。行こう!」
第1ターミナルから無料連絡バスに乗った2人を信じられない光景が待ち構えていた。トンネルに差し掛かってすぐ、対向車のバスの車内に、不必要なオーラを放ちまくって乗車しているすぅの姿が見えたのだ!
YUIMETAL「やられた罠だったんだ!」
MOAMETAL「くっそー、これ見よがしにオーラを出しやがって!」
YUIMETAL「すぅちゃんって広島に行くんだよね?最終的に国内線の方に必ず戻るんだった…。」
MOAMETAL「とにかく着いたらすぐ折り返しのバスで引き返そう!」
2人はそのままバスを降りずに国内線ターミナルへと引き返した。そのバスがトンネルを潜り抜けようかというところで再び連絡バスと擦れ違った。ここで由結の恐るべき動体視力が標的を捉える。
YUIMETAL「あっ!すぅちゃんまたバスに乗ってた!オーラ消してたけど間違いない!」
MOAMETAL「マジか?でも気配とか消しちゃって、今度は自信なかったんだなw」
そこで2人は国内線のバス降車場で待ち伏せする作戦をとった。広島行に搭乗するすぅは必ず国内線ターミナルに戻ってくるはず。そこを拿捕してくすぐり倒す算段だ。しかし次のバスにもその次のバスにもすぅは乗車していなかった。まさかギリギリまで向こうにいる作戦か?するとお花を摘みにいっていた由結が新たな情報を仕入れてきた。

「CMIYC 5」

YUIMETAL「最愛……残念なお知らせがあります…。」
MOAMETAL「え、まさか……出来ちゃったの?」
YUIMETAL「何がだよ。……違うの、国際線からはバス以外にも電車でこっちに来られるみたいだよ。」
MOAMETAL「マジっすか?」
ガックリと肩を落とす2人にすぅからの着信アリ。チャンスだ!由結が電話をとる。
YUIMETAL「もっしー、すぅちゃん?今どこー?」
SU-METAL「今ねー……おっと危ない。うっかり居場所を言いそうになっちった。」
YUIMETAL「チッ…………タイムリミットってあと2時間くらい?」
SU-METAL「そうだね、搭乗手続があるからそれくらいかな?」
YUIMETAL「ふーん、何で逃げるの?ウチらはこんなに会いたがってるのにさ。」
SU-METAL「だってくすぐられるの嫌だもん。」
YUIMETAL「まさかゴールの保安検査場を通過して中に入ってないよね?」
SU-METAL「うん、入ってないよ。」
YUIMETAL「じゃあタイムリミットは16時に設定しよう。場所は大体わかったから、じゃあね。」
SU-METAL「切られちった…。しかし見事な陽動作戦ね、さすが由結ちゃん。」
普通なら追う側はもっとギリギリの時間を設定したいところなのに潔く出発1時間半前をリミットに設定したり、嘘だとわかっているのに場所は大体わかったなんて言われたらそれまで何も考えてなかったのについついどうしようか考えてしまう。残り時間を計算して行動をし始めると相手に思考が読まれ易くなってしまうのだ。そしてやはりこの会話をきっかけにすぅは動く。ユニクロで服を購入し着替える作戦に出たのだ。

MOAMETAL「すぅちゃん動くかなぁ?」
YUIMETAL「きっと動くよ。だってこのかくれんぼを一番楽しんでるのはすぅちゃんだもん。」
MOAMETAL「すぅちゃんに会いたいなぁ…。」
YUIMETAL「会えるよ。ちょっとズルいかもだけど大丈夫…………ニヤリ。」

「CMIYC 6」

ユニクロのジーンズに無地のTシャツとパーカー。オーラを消してしまえば完璧に人混みの中に紛れ込んで擬態してしまう。完璧過ぎる自分にすぅは茶目っ気を加えることにした。
SU-METAL「うん、ハンデには丁度いいんじゃないかな。」
バッグからメガネケースを取り出すと、すぅはおもむろにサングラスをかけた。そう、あのハズセメガネだ!もちろんType-S、FOX GODの文字が書かれてるあのタイプだ。そしてそのサングラスをかけた途端、さすがにすぅは周りから………
SU-METAL「って誰もこっち見てないしー。」
相変わらずの特殊能力ですぅはスタスタと空港内を歩き出す。その頃、肝心の2人は喫茶店でまったりしていた。それぞれ由結はチーズケーキを最愛はレアチーズケーキを口へと運んで悦に入っている。ジンジャーエールをストローで飲みながら最愛は疑問を投げ掛けた。
MOAMETAL「由結P、こんなとこでまったりしてて大丈夫なの?すぅちゃん捕まえられないYO!」
YUIMETAL「どうせ今動き回ってもあのカメレオンは捕まえられないわ。だから待ってるの。」
MOAMETAL「待ってるって……何を?」
YUIMETAL「もちろんタイムリミットの時間よ。」
MOAMETAL「ふーん、何か考えがあってのことなのね…。由結Pに任せるわ。」
少しおしゃべりなんかもしていよいよ時は熟した。2人は立ち上がりいざ戦場へ向かわんとする。
店員さん「ケーキセット2つで2100円です。」
YUIMETAL「領収書を小林でくださーい。」
2人が向かったのは第2ターミナル出発階の搭乗口。
YUIMETAL「ここからが問題よ。羽田は広いから保安検査場がいっぱいあるわ。」
MOAMETAL「そっか、ここですぅちゃんを待ち受ける訳ね。」
YUIMETAL「誘導はした。すぅちゃんは絶対に来る。あとは私達が見つけられるかの戦い。」
MOAMETAL「了解。絶対に見つけてやるからな、ウォーリー!」

「CMIYC 7」

SU-METAL「ふふっ、ここからが私の特殊能力の見せどころね。」
設定されたタイムリミットの5分前、保安検査場に姿を見せたすぅ。しかし彼女にとっての誤算は今、眼前に広がってるこの光景だ。どの入口も長い行列が出来ている。さすがのすぅの特殊能力を持ってしても並んでいるところに由結最愛の査察が入れば見つかってしまう可能性が高い。
SU-METAL「でもすぅは逃げない。これまでも、これからも…。」
すぅは気配を消したまま一番奥の保安検査場入口にひっそりと並んだ。しかし、1分も経ってなかっただろう、彼女は背後から肩を叩かれる。
YUIMETAL「すぅちゃん捕まえたYO!……ゲームオーバー。」
SU-METAL「あちゃちゃ、やっぱりダメだったかー。」
どことなく嬉しそうな感じもするすぅの天を仰ぐその姿。ライブの後と同じくやりきった感じの充実した表情。そこに最愛が意外な反応を示す。
MOAMETAL「すぅちゃん……最愛はすぅちゃんに会いたかったんだから!」
最愛はガバッとすぅに抱きつくとその無い胸に顔を埋めた。
SU-METAL「あらあら、最愛ちゃん公衆の面前で人の豊満なバストに顔を埋めるなんて困った子ね。」
MOAMETAL「えっ?胸?……ゴメン、背中かと思った…。」
そんないつものやりとりに由結が口を挟む。
YUIMETAL「今回のかくれんぼ、勝者はやっぱりすぅちゃんだわ。」
SU-METAL「え?何で?時間内にすぅは捕まったんだから負けだよ。」
YUIMETAL「電話で由結はズルしたの。ゴールが保安検査場を通り抜けることだと一方的に言いつけた。」
MOAMETAL「そっか、そもそもかくれんぼだからゴールとかってないもんね。」
SU-METAL「なるほど……こりゃ一本取られたわね。」
YUIMETAL「でもね、早めの時間設定にしたのは少しでもすぅちゃんと話したかったからなんだYO!」
SU-METAL「そうだったんだ。じゃあ出発の時間までTKGでも食べる?」
MOAMETAL「それお昼に食べたっつーのw」

「CMIYC 8」

空港ロビーの椅子に陣取り楽しそうに話す3人。今日のお互いの行動を説明し合って感心したり驚愕したり。あっという間に時間は過ぎていった。
SU-METAL「あ、そろそろ出発の時間だ…。それじゃあ、行くね。」
MOAMETAL「うん、いってらっしゃい。」
シーユーのポーズで颯爽と立ち去ろうとするすぅ。背を向けたすぅに思わず由結が声を掛けた。
YUIMETAL「あ………すぅちゃん!」
SU-METAL「んっ?」
すぅが振り返ったその時だった。全身黒い服に身を固めた外国人女性がすぅーっとすぅに近づき何かを彼女の身にあてる。その瞬間、すぅは全身の力が抜けその場に倒れこんでしまった。
MOAMETAL「危ない!」
瞬時に最愛はすぅに駆け寄り彼女が地面に叩きつけられるその直前でスライディングして間に体を滑り込ませた。間一髪、間に合った。最愛はクッションとなりすぅを受け止める。
YUIMETAL「ちょっと!」
由結が謎の女に駆け寄ろうとしたその時、目を疑うような光景が…。
MOAMETAL「えっ、拳銃?」
由結はとっさに身を翻し、最愛はとっさにすぅを庇った。その隙をついて謎の女は走り去ってしまった。これまたあっという間の出来事。
YUIMETAL「最愛!すぅちゃんは大丈夫?」
MOAMETAL「わかんないけど!由結はとりま小林に電話して!」
そんな3人の周りには邪魔くさい野次馬どもが壁となって取り囲んでいた。

「CMIYC 9」

YUIMETAL「もしもし、小林さん?すぅちゃんが大変なの!」
由結が今さっき起こった出来事を大きな模造紙に書いて説明すると言い出したのでとりあえず落ち着くように小林は諭した。由結が口頭で説明を始めると見る見るうちに小林の顔が青ざめていったが、電話越しなので由結にはそれを知る由もなかった。
KOBAMETAL「状況はわかった。スーメタルは無事なのか?」
YUIMETAL「そうだ、すぅちゃん!」
由結が振り向いてすぅの方に視線をやると傍にいた最愛が両腕で大きく丸を出す。それを見て担架部隊は戻っていった。ちなみにやかんの水も断った。そして一旦、フィールドの外へ。
MOAMETAL「でも本当に大丈夫なの?あの女にスタンガンみたいなヤツあてられてなかった?」
SU-METAL「あれね、なんかすんごいブルブル震えてて脇腹のこちょばいところにあてられて…。」
MOAMETAL「…………はい?」
SU-METAL「でもって、耳に息を吹きかけられたからヘナヘナヘナ~ってなったの。」
MOAMETAL「ほお………それで気絶するほど感じちゃったと……。」
SU-METAL「何よ!人をエロクイーンみたいに言わないでよ!」
MOAMETAL「通り魔?………それとも痴漢?」
SU-METAL「どちらでもないわ。由結ちゃん、その電話貸してもらえる?」
すぅは携帯電話を受け取ると急にシリアスな表情になり電話の向こうの人物にこう告げた。

SU-METAL「小林さん、やられたわ。アレを奪われてしまった…。」

「CMIYC 10」

KOBAMETAL「お前、奪われたって………まさか、バージンか!」
SU-METAL「………変態セクハラプロデューサー、弁護士から連絡がいくと思うから覚悟しとけや。」
KOBAMETAL「違うわ!勘違いするな!アレのコードネームがバージンだろうが!」
SU-METAL「あっ………そうでしたw」
KOBAMETAL「で?奪われちゃったのか、バ、バババ、バージンは?」
SU-METAL「いきなり金髪の女にバージンを奪われました!」
電話での会話の内容が聞こえてこないので、すぅの突然のカミングアウトに由結と最愛は色めきたった。
YUIMETAL「すぅちゃんがパツキン女にバージンを奪われたんだって!」
MOAMETAL「それは面白い!早速さくらのみんなにメールで教えてあげよう♪」
SU-METAL「やめんかい!後でちゃんと説明してあげるからちょっとその辺で遊んでてくれる?」
YUI&MOA「はーい!」
SU-METAL「フライトキャンセルしてこれから3人でそっちに向うわ!」
KOBAMETAL「わかった、こっちも準備しておく。」
SU-METAL「タクシーの領収書は小林で切っておくから。」
KOBAMETAL「そこはアミューズでよくないか?」
SU-METAL「とにかくすぐに向かいます。」
KOBAMETAL「ちなみに俺の初めてを奪ったのも金髪女性だった…。彼女はプロだった…。」
SU-METAL「ツー、ツー、ツー…」
KOBAMETAL「えへ、電話切れてやんの…。」

「CMIYC 11」

A社へと向かうタクシーの中、由結と最愛はすぅを質問攻めにしていた。
YUIMETAL「まずバージンって何よ?」
SU-METAL「詳しくはわからないんだけど、何だかとっても重要なデータなんだって。」
MOAMETAL「なんか漠然としててしっくりこないなぁ。」
SU-METAL「BABYMETALに携わる者達にとってとても重要なモノだって小林が言ってた。」
YUIMETAL「ふーん、そんな大事なモノを何ですぅちゃんが持ち歩いてたの?」
SU-METAL「実は広島である人物に渡して来いっていう指令を受けたの。」
MOAMETAL「それで広島に?ある人物って誰よ?」
SU-METAL「それは広島空港に着いたら教えてもらう手筈になってたの。」
YUIMETAL「胡散臭い話ね。すぅちゃん何か隠してない?」
SU-METAL「ギクッ!すぅが実は隠れ巨乳って話はみんなには内緒だよ!」
MOAMETAL「そういえばすぅちゃんのバージンを奪った金髪巨乳女は何者なのさ?」
SU-METAL「多分、バージンを狙ってる敵対組織の雇った人間…。」
YUIMETAL「とりま巨乳はぶっ潰す!」
MOAMETAL「嘘ー!最愛も潰されちゃうじゃん!」
SU-METAL「やだー!すぅも潰されちゃう!」
YUIMETAL「……オマエ潰サナイ。オマエモ潰サナイ。ペチャ、ミンナ仲間。」
3人を乗せたタクシーは渋谷のA社へと到着した。
SU-METAL「あ、領収書は小林でー。」

「CMIYC 12」

タクシーから降りた3人を小林がロビーで出迎えた。早速3人はタクシー代や飲食代の領収書を押し付ける。小林は何も言わずそれらを受け取ると一緒にエレベーターへと乗り込んだ。
KOBAMETAL「スーメタル、ケガは無かったか?」
SU-METAL「はい。そんなことよりすいません、大事なモノを強奪されちゃって……。」
KOBAMETAL「いや、いいんだ。3人が無事だっただけでもヨシとしよう。」
社内の会議室で緊急対策会議が開かれることになったらしい。バージン奪還の作戦会議となるであろう。そこにすぅも出席して欲しいとのことだ。だが当然、あの2人が黙っちゃいない。
YUIMETAL「小林さん、どうして由結はお呼ばれされてないんですか?」
KOBAMETAL「でっかい模造紙にいろいろ書き込んでプレゼンとか始めちゃうから。」
MOAMETAL「ねぇ、最愛は?最愛は聞き上手だよ。わかるでしょ?」
KOBAMETAL「以前、会議に飽きてストローでゼリーをじゅるじゅるやってたの誰だっけ?」
MOAMETAL「チッ…………そんな昔のこと憶えてやんの、女々しいメメバヤシめ。」
SU-METAL「じゃあ、行ってくるね。」
大人達に取り残された2人は別の会議室ですぅを待つことにした。2人でジャンケンしたり変顔対決をしたり。ものの5分で飽きてしまった最愛だったが、舌をペロリとやるとニンマリ笑みを浮かべながら由結に耳打ちをする。
MOAMETAL「敵の来襲よ。ぶっ潰しちゃおうか♪」
YUIMETAL「おいでなすったか。ザコ2匹、準備運動くらいにはなるんじゃない?」

「CMIYC 13」

YUIMETAL「最愛!武器はこれでいいかしら?」
MOAMETAL「うふふ、上等よ。」
最愛は由結から武器のスリッパを受け取ると、すぐに戦闘態勢に入った。
MOAMETAL「作戦は?」
YUIMETAL「近くの奴からひっぱたく……さあ、来るよ!」
壁に沿って少しずつ間合いを詰めてくる左の敵。少し離れて様子を窺っている右の敵。言葉は何も発しない。表情一つ変えず淡々としてる様はまさに不気味である。
MOAMETAL「先手必勝!」
間合いをじりじりと詰めていた最愛は左側の敵に一気に襲い掛かる。だが大きな振りかぶりから放たれた渾身のファーストアタックは見事に避けられてしまった。
YUIMETAL「速い!最愛!反撃に気をつけて!」
しかし攻撃を受けたのは由結の方だった。この一連の流れに乗じて様子を窺ってたもう一匹の敵の奇襲を受けてしまう。一直線に顔面への飛来。由結は虚を突かれとっさにしゃがみ込み、悲鳴と共にそれをかわす。
YUIMETAL「ギャー!怖いー!気持ち悪いー!」
MOAMETAL「由結大丈夫?」
YUIMETAL「なんとか……だって顔を目掛けて飛んでくるんだもん!」
MOAMETAL「あはは、コイツらも由結の可愛さにやられちゃってたりしてw」
軽口を叩きながらスリッパもパンパンと叩く最愛。しかし敵もさるもの、その俊敏性と様々な障害物を利用しての順応性で最愛の攻撃を悉くかわしている。そして先程までの威勢の良さはどこへやら、由結は完全に及び腰だ。場はまさにゴキブリどものペースとなった。
YUIMETAL「最愛!少し時間を稼げる?いい案があるの!」
そう言うと由結は身を屈めながらこの部屋から出て行った。
MOAMETAL「由結………逃げたな……。」

「CMIYC 14」

SU-METAL「お待たせー。あら、最愛ちゃん。スリッパは手じゃなくて足で履くものよ。」
MOAMETAL「すぅちゃん、手伝って!敵襲よ!2対1で不利だったの!」
SU-METAL「……ああ、ゴキブリね。二匹もいるなんて珍しいわねw」
MOAMETAL「ふっふっふ、ゴキどもめ。これで数的不利は無くなった、覚悟せい!」
SU-METAL「あれ?由結ちゃんがいたら数的優位になるのに…。」
MOAMETAL「由結は恐れをなして逃亡したよ…。とんだ腰抜け野郎さ!」
その時、廊下をバタバタ駆けてくる音が聞こえてきた。入口の方に目をやると、そこには独特な前傾姿勢のフォームで走ってきて息を切らせた由結の姿が。
YUIMETAL「ハァハァ、誰が腰振り野郎だって?」
SU-METAL「違う違うw あ、ひょっとして殺虫剤持って来たの?」
YUIMETAL「そうよ、人間は知恵で勝負よ。やっぱり手間取ってたわね、最愛。」
MOAMETAL「うっさいわ!手加減してやったんだい!」
するとすぅはスタスタと敵に近寄ると信じられない行動に出た。
SU-METAL「ふーん…………えいっ!」
なんとすぅはいきなり何の前触れもなくゴキブリをひょいと素手で捕まえた。
YUI&MOA「ギャーーーー!」
由結と最愛はあっという間にすぅから距離を取る。明らかにドン引きしている。それを見たすぅはニヤリと笑う。悪いことを考えている表情だ。
YUIMETAL「あ、そういえばLoGiRL観に帰らなきゃ…。」
MOAMETAL「そ、そうね今日も莉音は出ないんだってさ。」
YUI&MOA「SEE YOU!」
SU-METAL「SEE Y……待てぃ!」
すぅはゴキブリを投げつけると恐怖に顔を強張らせた由結と最愛の間の壁にグシャっと…。すると何ということでしょう、壁に叩きつけられたゴキブリからは煙が出てきたではありませんか。
YUIMETAL「煙?……まさかこのゴキブリって機械?」

「CMIYC 15」

なんと、すぅが壁に叩きつけたゴキブリからは回線がショートしたのだろうか白い煙が発生している。さらに金属の細かい部品がバラバラに飛び散り辺りに散乱。さすが21世紀、精巧なゴキブリ型ロボットまで出来ていたとは。
MOAMETAL「ってことは、こいつもロボットか!コノヤロー!」
SU-METAL「あ、そっちは本物よ。」
MOAMETAL「うわぁ、あっぶねー!掴んじゃうところだったよー。」
3人はすぐさま小林に事の顛末を報告し、ゴキロボの残骸を見せた。
KOBAMETAL「よく出来てるなコレ、本物と見分けがつかないじゃんか。」
YUIMETAL「だってそれ、由結がやっつけた本物のゴキブリだもん♪」
KOBAMETAL「うわぁ、あっぶねー!ツンツンしちゃうところだったよー。」
MOAMETAL「でも何ですぅちゃんはこっちのゴキブリがロボットだってわかったの?」
SU-METAL「なんかー、動く時に微かにだけど機械音みたいなのがしてたのよねぇ。」
YUIMETAL「さっすが、耳だけはいいのね。」
SU-METAL「由結ちゃん、どういう意味かしら?」
KOBAMETAL「よく出来てるなコレ、本物と見分けがつかないじゃんか。」
YUIMETAL「だからそれは由結がやっつけた………………えい!シューーーッ!」
KOBAMETAL「こらー!人に向けて殺虫剤を噴射するなー!ケホッ、ケホッ!」
MOAMETAL「あっ!小林さんの肩にゴキブリが!すぅちゃん、コイツは本物?」
SU-METAL「うーん、殺虫剤で弱ってるから本物ー。」
MOAMETAL「あ、小林も弱ってるー。本物だ!」
罰として3人は小林から1時間も説教されてグッタリ…。
そして後日、メカゴキブリからとんでもない事実が判明するのであった。

「CMIYC 16」

あの日からちょうど一週間。なんとなくあの事件のことなんてどうでもよくなってきた頃、リハーサルを終えた3人は小林に呼び出され、あのゴキブリと格闘した会議室にいた。
SU-METAL「由結ちゃんったら殺虫剤なんて持って来ちゃって準備万端ねw」
YUIMETAL「だって過去に出現した実績があるからね…。」
MOAMETAL「見て見て!最愛もゴキブリホイホイ持って来たYO!」
KOBAMETAL「お前達って本当におめでたい奴らだな。」
SU-METAL「でしょ?本当に私達っておめでたい奴らよね♪」
YUIMETAL「すぅちゃん、おめでたいって褒められてる訳じゃないのよ…。」
MOAMETAL「むしろディスられてるね。」
SU-METAL「そうなの?……騙しやがったな、小林!」
KOBAMETAL「先週の例のメカゴキブリを詳しく調べてみたんだが……。」
SU-METAL「何かわかったんですか?」
KOBAMETL「クールジャパンだった。」
YUIMETAL「は?」
KOBAMETAL「日本国内の最先端テクノロジーを駆使して作られた精密機械だったんだよ。」
MOAMETAL「ふーん、本物そっくりだったもんねー。」
KOBAMETAL「あのメカゴキブリ一匹の価格はウン千万…。」
YUIMETAL「ウンチ万!」
SU-METAL「これこれw」
MOAMETAL「そんな高価なモノをすぅちゃんは破壊しちゃったの?」
SU-METAL「だって、知らなかったんだもん。」
KOBAMETAL「メカゴキブリを作った研究所から弁償しろと請求書がきてるんだなこれが。」
YUIMETAL「逆に不法侵入で訴えちゃえば?」
MOAMETAL「つまりすぅちゃんのバージン奪った奴らとは無関係ってこと?」
SU-METAL「誤解を招く言い方やめい!」
KOBAMETAL「おそらく無関係。」

「CMIYC 17」

小林の適当な解釈に意義を唱える人物が現れる。
MIKIKO先生「いや、そうとも言えないわ!」
今回独自に調査をしていたMIKIKOは何か情報を掴んだのかしたり顔で部屋に入ってきた。
MOAMETAL「先生、どういうこと?」
MIKIKO先生「ダンサー仲間の情報によるとその研究所で働いている研究員メンバーの一人が例の組織の幹部の妹の旦那さんのはとこの直属の上司が行きつけにしている飲み屋の常連客が共同出資している会社で10年以上アルバイトをしている人のお兄さんらしいわ!」
YUIMETAL「これでつながったわね!」
KOBAMETAL「おそらく無関係だろ…。」
MOAMETAL「じゃあ、そのアルバイトのお兄さんとやらに探りを入れてみるか…。」
女性陣がメカゴキブリと例の組織との意外すぎる接点に湧きかえる中、女ってやっぱり違う生き物なんだなとしみじみ思う小林だった。しかしダンサー仲間の情報網にはただただ驚かされるばかり、なんと先程名前が挙がった人物全員の住所氏名まで判明してるのだ。
YUIMETAL「では例の組織の幹部、浜田という男を探しましょう。」
MOAMETAL「見つけさえすれば男なんてどうにでもなるでしょ。」
MIKIKO先生「それがそうでもないのよ。男って生き物は別の生き物なんだから…。」
なぜか女性陣から蔑んだ眼差しを向けられる男一匹。このとばっちりを受けそうな流れを変えるべく小林は話題を振った。
KOBAMETAL「そういえばスーメタルは襲われたときに何か気付いたことってあったか?」
SU-METAL「うーん………別に…。」
MOAMETAL「あ、でもあのパツキン女ってひめたんに少し似てなかった?」
SU-METAL「えー、ひめたんに?金髪のひめたんなんて想像つかないわw」
MOAMETAL「顔とかじゃなくて乳が似てたのよねぇ……乳が。」
YUIMETAL「真顔で言うなw」
MIKIKO先生「ちょっと!むっつりスケベが聞いてるからやめなさいって。」
話題転換は完全に逆効果。小林はまたもや女性陣にいわれもない軽蔑の眼差しを浴びてしまった。

「CMIYC 18」

翌日、すぅは学校での補習授業を受け終わるといつものように気配を消して家路を急いでいた。この特殊能力のお陰で誰にも気付かれたことのなかったすぅだったが、今日は違った。
SU-METAL「気配がする……後ろに2人……いや、3人?」
明らかに三丁目の角から後をつけられている。なぜ?もう何も持っていないし、狙われる覚えもない。
SU-METAL「ああ、月がとっても紅いから遠回りして帰ろうっと♪」
わざとらしく声に出して言うとすぅはいきなり、昔タバコ屋だった店の手前の細い路地をクイッと曲がった。この辺り一体は迷路のような細い路地が入り組んでおり、一見さんは必ず迷ってしまうという通称「阿弥陀小路」。多分に漏れず、すぅもいきなり迷ってしまった。
SU-METAL「あれ?さっきここ通った?……あっちかな?こっちかな?」
迷子の仔猫は右往左往、私のおウチはどこですか?それでも後をつけてくる謎の輩達。
SU-METAL「上等じゃん。できるもんなら捕まえてみなさい、みなさいなー!」
すぅは突発的に走り出した。東へ西へ、南へ北へ、そしてやっぱりさっきの場所へ。
SU-METAL「どうなってんの?……ここはどこ?私は誰?」
私はすぅ。そう、私はスーメタル。世界のメタルクイーン!どんな困難も乗り越え、絶望さえも光にしてきた。噛まない飴はない。どうしても途中で噛んじゃうんだよね、飴って。夢の中でキツネさんが教えてくれた。迷路で迷って出られなくなったら左の壁伝いに進むといいよって。だから私は左の壁伝いに歩き出す。後をつけてくる連中も壁伝いについてくる。その関係性はまるでパックマンのよう。
SU-METAL「あ、行き止まりだ。」
仕方なくすぅが踵を返す。それを見て、つけていた連中は慌てて元来た道を引き返す。その光景はやっぱり、パワー餌を食べた後のパックマンのようだった。

「CMIYC 19」

すぅはここで勝負に出る。さらに気配を消し足を速めた。後をつけてきた連中との距離を一気に縮める。もうそこの角を曲がったところに奴らがいる。しかし相手もなかなかの手練れか、あと数メートルというところで気付かれたようだ。だがここはすぅちゃんチャンス、ちゃんすぅスーチャンだ。
SU-METAL「このメタルクイーン様に何の用かしら!」
気配がしていた方向に勢いよく飛び出し仁王立ちで睨むが視線の先には誰の姿もない。残念ながら紙一重逃げられてしまったか。でも何だかスースーする。背後か?上か?いや、下だ!すぅの股下に人の気配がする。
SU-METAL「ぎゃーー!この変態痴漢野郎ー!」
すぅのハイキックをかわした人物は降参とばかりに両手を挙げて彼女を制する。
MOAMETAL「ちょ待ってYO!全然とっておきの場所じゃないじゃんかー!」
何と、絶対に見つからないと言われていた場所に身を潜めたのは最愛だった。ということは、先程からすぅの後をつけてきたのは最愛だったのか?
YUIMETAL「最愛ったらとっさに癖ですぅちゃんの股座に隠れるなってのw」
MIKIKO先生「見つかっちゃったらしょうがない。さすがスーメタルだね…。」
意外な人物達が自分のことをつけてきたのを知り、すぅは目を丸くする。
SU-METAL「まさか、これって………パックマンごっこ?」

「CMIYC 20」

SU-METAL「何故3人してすぅの後をつけてきたの?まさか……すぅのリアルバージンを奪おうと…。」
MIKIKO先生「アホか!お前のバージンなぞ興味ないわ!」
YUIMETAL「大体、私達にはチ〇(以下自粛)」
MIKIKO先生「そうだそうだ。付いてないから奪えないんだぞ!」
軽いジョークに対する過剰反応に辟易したすぅは最愛に真顔で問いかける。
SU-METAL「どういうことか説明してくれる?」
MOAMETAL「実は例の組織の幹部の浜田って人物、髪の長いメタラーの女性かもしれないの。」
SU-METAL「女性で浜田でメタルといえば………浜田麻里さん?」
MOAMETAL「最初はそう思ったの。でも調べてみたら違ったの。だからわからなくなったの。」
SU-METAL「そうだったの…。でも何ですぅの後をつけたの?スパイだと思ったの?」
YUIMETAL「ちょっと賭けてみたの。また襲われるかもって思ったの。だから尾行したの。」
MIKIKO先生「語尾にたのたのたのたの、ウルサイわ!たのきんトリオかっての!」
SU-METAL「たのきんトリオ?……えっとー、トシちゃんとー。」
MOAMETAL「黒柳さんこんばんはー!マッチで~す!」
YUIMETAL「えっとー………あと一人あと一人………三波春夫だったっけー?」

やっと「阿弥陀小路」から抜け出した4人は結局いろんなことをうやむやにしたまま夜も遅いので帰路につくことに。だが、すぅ由結最愛の3人はそれぞれ自宅のパソコンを使って1つの疑問を解き明かしていた。

SU-YUIMOA「ああ!野村のよっちゃんだ!」

「CMIYC 21」

翌日の会議室に集いし3人、由結と最愛と……小林。やはり話題は一連の事件のこと。中でもうやむやになってたことの1つ、メカゴキブリがA社に潜入してきた目的は何だったのか?
KOBAMETAL「メカゴキブリには意外にもカメラのような装置は一切ついてなかったんだ。」
YUIMETAL「ふーん、じゃあ盗撮目的ではなかったってこと?」
KOBAMETAL「発信機とマイクは組み込まれていた。つまり盗聴目的だろうな。」
MOAMETAL「他にもまだ謎があるの。メタラーの浜田さんのことなんだけど…。」
KOBAMETAL「何かわかったのか?」
MOAMETAL「逆なのよね。MIKIKO先生によると浜田という人物だけ素性が掴めないらしいの。」
YUIMETAL「存在していない可能性もあるってこと?」
KOBAMETAL「誰かが成りすましているとか、誰かが偽名を使っているとか。」
MOAMETAL「そもそも浜田なんて人はいない……とか!とか!」
YUIMETAL「あはは、彩未ちゃんの曲みたいだねw」
KOBAMETAL「あとはスーメタルを襲った金髪女のこともまだ全然わかってないぞ!」
MOAMETAL「あー、乳がひめたんそっくりの女ね。最愛もあれくらいまで育つといいなぁ。」
YUIMETAL「メカゴキブリ……浜田……ひめたん…………いや、まさかねw」
KOBAMETAL「どうした?何か引っ掛かるのか?」
YUIMETAL「いえ…………そういえばバージンって一体何なんですか?」
KOBAMETAL「うーん、ちょっとそれは教えられないんだよねぇ。」
MOAMETAL「どーせアダルトビデオのデータとかが入ってるんじゃないの?」
KOBAMETAL「………………黙秘権を発動します。」
YUI&MOA「図星かい!」
そんな会議室でのやりとりに聞き耳をたてている髪の長い女性がいることに3人は全く気付いていなかった…。

「CMIYC 22」

由結と最愛が小林にお父さんと呼ぶことを強要されている会議室のすぐ外では髪の長い女性が中のやり取りに耳を傾けていた。ときどきクスリと笑ったりしながら部屋の中の様子を窺っている。中での一連の会話が終了したところを見計らって彼女は静かにその場を離れると歩きながら携帯電話を取り出した。誰かに電話を掛けていたのだが相手がどうやら出なかったようだ。すると今度はメールを打ち始める。

「やっぱりあの子は勘がいいわね。警戒しなくっちゃ…。あと浜田にはしばらく日本に来ないほうがいいと伝えておくわ。」

送信ボタンを押すと彼女は颯爽と街中へ消えていった。スタイリッシュでカッコいい若い女性なのだから擦れ違う人は皆、彼女のことを振り返って見てもいいものだが不思議とそうはならない。それどころか彼女の存在にさえも気付いていないようだ。何故ならそれが彼女の特殊能力なのだから…。
その頃、由結は自分の推理を誰にも話すことが出来ずにいた。そう、相方の最愛にさえも…。とにかくいろんな場面で違和感を感じずにはいられなかった。あんなに精巧なメカゴキブリを瞬時に見抜いたこと。謎の人物の名前が浜田であるということ。そういえば襲われ方も不自然だった。それに最愛が可愛い娘のバストを誰かのそれと見間違えるとも思えない。今回の事件の鍵を握ってるのは間違いない、中元すず香だ!
本人に直接真相を問うべく由結は単独行動に出た。居場所ならわかる。メカゴキブリに搭載されてた極小発信機をすぅに仕掛けておいたのだ。それを受信する装置も社長におねだりして入手済み。由結は最愛とバイバイした後、家に帰るフリをしてすぅを追った。しかしすぅに仕掛けた発信機は元々謎の組織も受信していたということを由結はすっかり忘れてしまっている。そんな由結の後を早速尾行する黒い影…。様々な者達の思惑が交錯し、人々は意図せず渋谷に集結することとなった。
 
「CMIYC 23」

ここは渋谷O-EAST。ここを今回の一連の出来事の精算場所に選んだのはすぅだった。
YUIMETAL「すぅちゃん……話があるんだけど。」
物陰から現れたのは由結だ。発信機を頼りにここを探し当てた。
SU-METAL「さすが由結ちゃん、勘のいい子ね。」
YUIMETAL「今回のことを由結なりに考えて昨晩、模造紙にまとめてきました。」
SU-METAL「肌荒れが心配だから夜はちゃんと寝てくださいw」
YUIMETAL「すぅちゃんを襲ったフリをしたのって……ひめたんだよね?」
SU-METAL「………どうしてそう思うの?例の最愛ちゃんの話?」
YUIMETAL「うん。最愛がパイオツカイデー姉さんの乳を見間違える訳がないもん。」
SU-METAL「あちゃちゃ、特殊メイクで顔まで変えたのにまさか乳で見破られるとはw」
YUIMETAL「それからロン毛でメタラーの浜田さんの正体って……ハーマン・リよね?」
SU-METAL「うふふ、正解よ。やっぱり名前を安易につけちゃったかしらw」
YUIMETAL「メカゴキブリがA社を偵察してたのも知ってたんだよね?」
SU-METAL「もちろん。じゃなきゃあんな本物そっくりのゴキブリなんて触れないわ。」
YUIMETAL「でもどうしてメカゴキブリを壊したの?偵察してるのがバレちゃうじゃん。」
SU-METAL「うーん、何から話せばいいのやら…。」
ここで一人、我慢できずに話に割って入った人物がいた。困惑と怒りが入り混じった表情で半泣きの少女は信頼している者に裏切られたショックを隠せない。
MOAMETAL「すぅちゃんは敵なの?ちゃんと説明してよポンコツ!」
最愛は由結の後をつけてここに辿り着いた。最愛の登場に驚いた由結が思わず手を差し出すと2人はギュッと手を繋いだ。
YUIMETAL「最愛、泣かないで…。どうしてここに?」
MOAMETAL「なんか由結が白目がち……じゃなかった伏し目がちだったからおっぱ……心配で…。」
役者は揃った。

「CMIYC 24」

SU-METAL「まず整理をするとバージンを狙っているのは小林率いるチームA社と謎の組織チームKKB。」
MOAMETAL「チームKKB?……AKBとは関係あるの?」
SU-METAL「全然関係ないわ。」
YUIMETAL「KKB……かわいい、かわいい、ベビメタちゃん、の略?」
SU-METAL「ノン。」
MOAMETAL「可憐で、綺麗な、ボインの娘、の略?」
SU-METAL「ノンノン。」
YUIMETAL「臭くて、汚い、豚野郎?」
SU-METAL「酷いわ由結ちゃんw」
MOAMETAL「小石、蹴り、部?」
SU-METAL「うふふ、さすが最愛ちゃん。」
MOAMETAL「マジかw!」
SU-METAL「でね、バージンは2つ存在しているんだけど…。」
YUIMETAL「2つ?女の子のバージンはたった1回だけだYO!」
MOAMETAL「由結は永遠に守ってちょうだいねw」
SU-METAL「A社もKKBもそれぞれバージン自体は所持しているの。」
MOAMETAL「じゃあ、何で偵察したりいろいろやり合ってんのさ?」
SU-METAL「バージンの中のデータには超強力なプロテクトがかかっていて見られないの。」
MOAMETAL「ああ、パスワードが解らないのか!」
SU-METAL「そう……たった3文字のパスワードの為に…。」
MOAMETAL「たった3文字?何だろう、3文字といえば………う〇こ?」
SU-METAL「!!!」
KOBAMETAL「でかしたぞ、スーメタル!録音できたぜー!」
PA室に隠れていたA社の面々がガッツポーズをしながら現れた。あの3文字を皆に聞かれ録音までされてしまったと思うと最愛は恥ずかしくなり一気に赤面してしまった。

「CMIYC 25」

バージンのパスワードはたった3文字。しかしBABYMETAL3人のそれぞれの音声で「う〇こ」と入力しなければならないのだ。機械であーだこーだして作られた音声ではエラーが出てしまう。なので3人にはあの3文字をきちんと言ってもらわねばならなかった。KKBはその音声データを入手するためにメカゴキブリを忍ばせていたのだ。一転チームA社はいつでも音声が録れそうなものなのだが、小林は自分が変態扱いされたくなかったので頼みづらかった。
KOBAMETAL「さすがの俺でもJKにう〇こと言わせるのは強要できません。」
MOAMETAL「すぅちゃんの音声データは録れてるの?」
KOBAMETAL「叙々苑おごってあげたらあっさり。」
SU-METAL「面目ない。……で、その時に協力を要請されたの。」
KOBAMETAL「もあゆいは手強すぎてどうしても自然にう〇こと言ってくれなかった。」
MOAMETAL「へぇー、意外と言わないもんなんだw」
SU-METAL「そこでバージンやKKBのことを知ったすぅは協力するフリをすることにしたの。」
KOBAMETAL「やっぱりか!なんかおかしいと思った…。」
SU-METAL「KKBとも連絡をとり、ひめたんにも協力してもらってイケメンにも企業を紹介してもらったり。」
MOAMETAL「すぅちゃんが一番ちゃんとしてるようなw」
SU-METAL「だから今日ここに皆を誘導したの。バージンをどうするか皆で決めようと思って。」
MOAMETAL「そもそもバージンって何のデータが入ってるの?それがわからないと……。」
KOBAMETAL「それは俺が説明しよう。あれは去年の秋頃だった……」

「CMIYC 26」

昨秋、さくら学院の公開授業において伝説となる出来事が起こった。
KOBAMETAL「詳しい経緯は省かせてもらうが、そこでユイメタルがやりおったんじゃよ。」
MOAMETAL「昨秋の公開授業………まさか……例の?」
KOBAMETAL「そうだ。水野由結は不意に小石を蹴るポーズを披露して父兄さん達を昇天させたんだ。」
SU-METAL「実際に見た者の記憶にしか残っていないと言われている伝説の小石蹴りポーズ。」
MOAMETAL「ひょっとしてバージンの中のデータって……」
KOBAMETAL「その時の水野由結の小石蹴り映像だ。」
SU-METAL「映像は一切残ってないとされてたの。」
KOBAMETAL「その破壊力ある小石蹴りはすぐに伝説となり小石蹴り部なる組織まで誕生する始末。」
MOAMETAL「………そんなの由結に直接頼めばやってくれると思うんですけどー。」
KOBAMETAL「かー!違うんだよなー!それはそれで嬉しいんだけどさー。」
SU-METAL「最愛ちゃん、ライブと同じよ。あの時のあの場所でのパフォーマンスに意味があるの。」
MOAMETAL「ふーん。」
KOBAMETAL「あとはユイメタルの音声データが揃えばあの映像を観られるんだ!」
SU-METAL「みんなよっぽどなのね。イケメンも2つ返事で協力してくれるくらいだしw」
MIKIKO先生「はーい、それでは多数決を採りまーす。小石蹴り映像を観たい人?」
KOBAMETAL「もちろん我がA社メンバーは全員賛成だ!」
SU-METAL「KKBからも絶対観たいという委任状を預かってるわ。」
MOAMETAL「KKBさん達は来てないの?」
SU-METAL「お仕事が忙しいんですって。」
KOBAMETAL「あれ?ところでユイメタルは?」
MOAMETAL「皆の前でう〇こだなんて恥ずかしくて言えないってトンズラしました。」
SU-METAL「……ってことは?決まりだね。」
MOAMETAL「うん!ウチらは由結と一緒に逃げよう!」
KOBAMETAL「なんだとー裏切ったなー!待てー、ベビーメトゥー!」

SU-YUIMOA「うふふ………Catch Me If You Can!」

 完



「CMIYC から~の後書き」

 いつものようにノープランで書き始めて約2週間。「連載打ち切り」風に26編で終わらせることができました。
 前作と同じく辻褄が合わなかったり説明が不十分だったりする箇所もあるかと思いますが、そこは都合よく「素人の味」としてご甘受頂けたら幸いです。
 たまたま聴いていた曲名をタイトルにつけ書き始め、フィニッシュで小石蹴りに繋げられたのはぶちょー冥利に尽きるところです。
 駄文でしたが読んで頂いた方ありがとうございました。

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メロスピ部長の小説【奇妙な筒
CMIYC