bm-koishikeribu(yui)
Pinwheel87さんの作品集

ベビメタ童話-『白いロケット』

第4章1034-14日 23:48

BABYMETAL童話〜白いロケット (別役実童話集より)
(1)
 その白い、小さなロケットがさくら学院の校庭に着陸したのは、二日前のことだった。白いロケットは、必死に助けを求める信号を発しながら、地球を2週した後、力尽きるようにフラフラとこの校庭に着陸したのだ。当然ながら、政府内にも対策チームが組織され、有識者を集めた会合も、長い昼休みを挟んで2回開かれた。結論としては、ロケット内部に危険な宇宙人が潜んでいる可能性もあることから、武装自衛官でロケット周囲を取り囲んだ後、救出介護部隊をロケット内部に侵入させるということになった。相変わらず、助けを求める信号は発せられているが、最初に受信した信号を比べると、明らかに弱々しく、時に、ため息のようなものが感じられる信号となっていた。宇宙人の可能性が強いとはいえ、一刻も早く救出する必要があると誰もが思った。政府も漸く重い腰を上げ、救出開始の決定が出されたのが、昨日の深夜のことだった。
 この日の朝から、さくら学院の周囲は、物々しい警備とそれを取り囲む人々で溢れかえっていた。
「早く助けてあげればいいのにね。」
「本当だよ。政府は何をグズグズしているんだ。」
白いロケットの見るからに弱々しい佇まいを見ると、誰もが一刻も早い救出を願わずにはいられなかった。

(2)
さくら学院のOBとしてBABYMETLの3人も、そんな白いロケットを見つめていた。
最愛 「中には、どんな人が乗ってるのかな?」
由結 「わからないけど、なんか、ずっと私たちに語りかけてるような気がしない?」
すず香 「そんな気がしないでもないけど、あの白いロケットを見てると、不思議な感じ。なんか、胸がぞわぞわするわ。」
やがて、武装自衛官が2重にロケットを取り囲むと、救出用の工具をもった救出チームがロケットに近づいていった。
由結 「怯えてる。あのロケット、武器を持った自衛官たちに怯えてる。」
最愛 「由結。感じるの?」
由結 「感じる。傷ついてる。ずっと弱ってるよ。そして、今は怯えてる。」
すず香 「でも、とにかく助け出さなくちゃ。」
救出チームは、ロケットに近づくと、入口を探そうとしたが、そのロケットには、入口らしいものは見つからなかった。一箇所だけ、ボディーに裂け目があり、そこから黒い液体が染み出している。
「よし、この裂け目からこじ開けて見よう。バールを打ち込むんだ。」
救出チームが、バールの先端を裂け目に打ち込むと、黒い液体が多量に吹き出してきた。
同時に由結が耳を塞いでしゃがみこんだ。

(3)
由結 「ダメ、ダメだよ。そのロケットを傷つけちゃダメ!すごい悲鳴が聞こえる。」
最愛 「由結、どういうこと?」
由結 「傷ついてるのは、その白いロケットだよ。中には誰もいない。」
最愛 「あ、そーいうことか!」
いきなり、すず香が白いロケットに向かって走り出した。すず香は、自衛官の囲みをすり抜け、救出チームとロケットとの間に素早く体を滑り込ませて、叫ぶ。
すぅ 「ここから離れて! このロケットを傷つけないで!助けを求めてるのは、このロケットだよ。中には誰もいないの!」
すず香の迫力に気おされ、救出チームは武装自衛官の囲みまでヨロヨロと後ずさりした。すず香に遅れて、最愛も白いロケットに辿り着き、ロケットの周囲を素早く観察する。
最愛 「この黒い液。これ、このロケットの血じゃない?」
というが早いか、最愛は校舎に向かって全速力で駆け出していた。
由結 「気づかなくて、ごめんなさい。痛かったよね。怖かったよね。」
由結は、ゆっくりとロケットに近づくと泣きながら語りかけた。こころなしか、白いロケットの緊張が少し和らいだようにも感じられた。
最愛は、息を切らせながら戻ってくると、白いロケットの裂け目に、大判の絆創膏を貼り始めた。
由結 「歌って欲しいの?由結の歌?ヘタでもいい?」
由結が泣きながら呟くと、白いロケットは、必死に頷くように、体を前後に揺さぶった。
由結は、大きく息を吸った。
人々には聞こえなかった。由結は口を開け、一生懸命歌っていたが声にはならなかった。声にならなくても、由結は歌い続けた。やがて、白いロケットが、「アリガトウ」と言うのが由結には感じられた。

(4)
その時、白いロケットは小さく震えると、虹色のほのかな光を放っていた。その光の中から、白い煙のようなものが浮かび上がり、空中で校庭を一週すると、ゆっくりと、空高くに消えていった。
最愛 「あれは?」
由結 「……白いロケットの魂だよ。」
さくら学院を取り囲んだ人々も、その白い魂を見上げていた。
「私たちは、なんて酷いことをしてしまったんだろう。」
「あんなに助けを求めていたのに、助けられなかった」
「でも、最後の虹色の光は綺麗だったね。」
「……そうだね。なんか、幸せそうだった。」
白いロケットの前では、すず香と最愛が、由結の肩に手をかけていた。
すず香 「助けられなかったけど、由結ちゃんのせいじゃないよ。」
最愛 「そうだよ。由結、歌ってあげたんでしょ。」
由結 「アリガトウって。でも、もっと前に気づけたのに。助けられなかった。」
すず香 「何を歌ったの?」
由結 「……True Colors.」
Your true colors
True colors are beautiful, Like a rainbow.